社会の変化のスピードが速い時代。今から16年後の2040年の日本はどうなっているのか、あなたは想像したことがあるだろうか。そしてあなた自身は、何をしているだろう?

 ここでは、池上彰氏が世界、そして日本社会の未来を予測した『池上彰の未来予測 After 2040』(主婦の友社)より一部を抜粋。日本の教育はこれからどうなっていくのか――。池上氏の視点を紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く

写真はイメージ ©RYH/イメージマート

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地方では私立の人気がない

 ゆとり教育で、円周率を「3.14」ではなく「3」と教えることになった、というニュースがセンセーショナルに流れたときがありました。

 このとき、大手進学塾が「円周率よさようなら」というコピーでキャンペーンを行い、公立校では子どもたちの学力が低下するかのように不安をあおりました。実際は学習指導要領の円周率は3.14のままで、指導要領の中にあった「目的に応じてを用いる」という文言が切り取られてひとり歩きをしただけだったのですが、この頃を境に私立中学を受験する人が増えていきました。

 ただ私立中学の受験が過熱しているのは、今でも首都圏や関西圏、および広島県くらいです。それ以外の地域では、基本的に公立志向です。

 地方では、高給の仕事が都市部ほどにはないため、私立の高い学費を払うことに抵抗があるのです。また子どもの数も母数自体が少ないため、地方だとそもそも私立の学校は生徒が集まらず、経営的にやっていけません。

 さらに東京にいるとあまり考えられないでしょうが、地方にはまだまだ「国立や公立の『おかみ』が上で、私立などの民間は下」という意識もあります。そのため就職も公務員が一番人気だったりします。そもそも、私立の人気がないのです。