日本で起きたのは「パニック売り」

 今回の暴落は、日銀の利上げもさることながら、アメリカの景気後退懸念が強く意識されました。ところが、日経平均が12.4%の下落を記録したのに、震源地アメリカのダウは同じ日2.6%の下落にとどまりました。

 日本で起きたのは、典型的な「パニック売り(投げ売り)」です。7月11日に史上最高値を付けた日経平均が下落に転じ、投資家が売りに回り、日米の悪材料で慌てふためいて「逃げ遅れるな」と売りが売りを呼び、歴史的な下げになりました。そして暴落の翌日(8月6日)には3217円高と、今度は一転して史上最大の上げ幅を記録しました。

 経済の実態や企業の業績予想が2日間でそんなに大きく変わるはずがありません。この2日間の記録に残る乱高下は、多くの投資家がすっかり冷静さを失っていたことを意味します。

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 株式市場では、よく「強欲と恐怖」と言われます。強欲とは、たとえば年初のように相場が勢いよく上がっているとき、「自分だけ儲けていないのは納得できない」「バスに乗り遅れるな」と慌てて買うことです。恐怖とは、今回のようなパニック売りです。

 他人が買うのを見て「強欲」で買うと、高値で掴んでしまいます。他人が売るのを見て「恐怖」で売ると、安値で手放すことになります。株は安く買って高く売れば儲かりますが、「強欲と恐怖」でその逆をやってしまうわけです。これでは、資産が増えるはずがありません。

 株式投資で大きな資産を築きたかったら、「強欲と恐怖」に支配されてはいけません。相場が上がっているときも今回のように下がっているときも、自分なりの分析と方針に従って淡々と売買するべきです。

「自分の感情をコントロールする自信がない」という個人投資家はどうすればいいでしょうか。そういう人は個別株投資をあきらめて、投資信託の積立投資に注力するのが得策です。積立投資でも若い頃から長く続ければ、億り人になるのは難しくありません。

 新NISAを機に投資家デビューした初心者にとって、今回の暴落は、初めての本格的な試練でしょう。ただ、打ちひしがれるのではなく、自分の投資スタイルを見つめ直すきっかけにし、長期的に資産を築いて欲しいものです。