日米の株式市場が乱高下している。日経平均株価は7月26日まで8日続落となり、3万8000円を割り込んだかと思えば、週明けの29日には一転して大反発するなど、神経質な展開となっている。
「日米の金融当局とも政策転換が議論されており、市場の値動きが激しくなっている」(市場関係者)といえる。
市場の急激な変化に個人投資家は戸惑いを隠せないでいる。特に今年1月から始まった新型NISAを通じて、初めて投信や株式投資を始めた初心者には初めての試練だ。「株価が連日続落した局面では、個人投資家のパニック売りもかなり発生した」(同)とされる。
SNS上でも「損切は早めに」という声と「パニック売りをするな」という両勢力が錯綜し、混乱している様が見て取れた。
だが、市場の混乱期に重要なのは「冷静な対応」であることは歴史が証明している。市場の乱高下についていこうとすれば損失は深まるだけだ。
借り入れを原資に株式投資を行うのは“愚の骨頂”
《日々の株価の変動に一喜一憂するな》
作家・渡辺淳一氏の「鈍感力」というミリオンセラーがある。厳しく複雑な現代を生き抜くには、ある種の鈍さ、鈍感力というものが必要であると説いている名著だ。投資の世界も、ある種の鈍さ、鈍感力が結果として良好な成績を残すケースは少なくない。
とくに新NISAを通じて初めて株式投資を始めた人には「鈍感力」が必要かも知れない。「株式投資を始めて以降、始終、株価が気になってチェックしてしまう」と語る初心者は実に多いが、これでは株式投資に“取り込まれ始めている”ようなものだ。日々の株価の変動に一喜一憂するのではなく、長期投資だと、どっしりと構えていればいい。
《素人が機関投資家よりも有利なポイントを放棄するな》
借り入れを原資に株式投資を行うのは“愚の骨頂”だ。なぜなら「毎期、決算しなくてもいい」という個人投資家の最大の利点を放棄しているのに等しいからだ。この点でプロの機関投資家よりも素人の個人投資家の方が有利だ。
時価会計をベースとする機関投資家の世界では、毎期、自身が保有するポートフォリオ(資産)を値洗いし、その価値を決算に反映しなければならない。しかも、価格が一定水準以下に大幅に下落していた場合は、減損処理して簿価を切り下げなければならない。こうした会計上の要請から、極端な場合、売りたくない資産でも売却を選択せざるを得ないケースもある。
これに対して個人の場合は、決算そのものがない。価格が下落していても損切して、損失を確定する必要はないのだ。極論すれば「儲かるまで持っている」ことが可能だ。