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寄り添う弁護士がもらい泣き

 60分間の会見で山口はたびたび号泣。寄り添う弁護士がもらい泣きするという違和感丸出しの空気であったが、山口自身が反省しているのはよくわかった。しかし、相手が未成年のためというジャニーズ側の制止によって、結果的に、問題行動の中身はまったくわからなかった。山口本人は「自分の甘さが問題だった」というが、会見を通じて、その大半が「酒のせいだった」と聞こえてしまう。飲酒が原因で入院治療したのに、退院後すぐに深酒するのは、それも酒のせい、甘さのせいというのだろうか。そして、これほどの事態を招いているのに、「またTOKIOでやっていけたら」とグループへの思いをたびたび吐露するあたりに、自分本位、自分勝手な印象を受ける。被害者への謝罪感情が全面に出てこないというのが、率直な感想だ。

 会見で本人の口から語られることはなかったが、酒に酔った山口は、未成年女性へ無理やりキスをし、ここでは表現できないほどの卑猥な言葉を投げかけたという。かたや被害者女性の心の傷はどうなるのだろう。山口の憔悴ぶりを見て一部のファンが「かわいそう」と同情する声をあげている。なかには「イケメン無罪」と言い放つ者もいる。一方、被害女性はSNSなどで、美人局にちがいない、示談金をせしめて喜んでいるでしょ、自分から家にほいほい行っているくせに、などと中傷が浴びせられている。これは二重の悲劇である。一部のファンから実際に嫌がらせされないか、とても心配になる。

 テレビ局さえひれ伏す強大な権力を持つジャニーズ事務所に守られてきた自分の立場に対し、山口におごりがなかったといえば嘘になるだろう。「無期限謹慎」といっても、いずれ、ほとぼりが冷めたと思われるころ、美談に仕立てて復活するのは目に見えている。それまでは山口に苦悩の日々が続くだろうが、それは決して彼だけの問題ではない。ジャニーズ事務所、テレビ局などがそれぞれ当事者として向き合うべき責任問題だと私は思う。今回、山口が所属する組織のトップが姿を現して頭を下げないことは異常といえるが、そのことに誰も異を唱えないのはさらに異常だ。そんな精神が受け継がれていく以上、芸能界から同様のトラブルは無くならないのではないか。

会見場を後にする山口 ©文藝春秋