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「勝ってくれよぉぉぉ!!!」電話口で叫ぶと…

 小俣と通谷はともに安楽と同じ2006年生まれだが、小俣は早生まれなため学年は1つ上。金メダルを獲得したトビー・ロバーツ(イギリス)は2005年3月生まれで、世界ユース選手権では2年に一度は安楽らと同一カテゴリーで戦ってきた、言わば“宙斗世代”でもある。

(左から)安楽、トビー・ロバーツ(イギリス)、ヤコブ・シューベルト(オーストラリア) ©JMPA

「あーーーくやしい!! 勝ってくれよぉぉぉ!!!」

 こちらが名乗るやいなや小俣は電話口の向こうで叫んだ。断っておくが、普段は礼儀正しい大学生だ。あまりの悔しさと、私とは彼が小学1年生からのクライミングジム仲間という関係性があってのことだ。

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「トビーへの歓声がエグかったから、メンタルが…」

 リード・ジャパンカップを2023年、2024年と2連覇中で、リード・ワールドカップでも昨季は中国・呉江大会で2位、今年は7月のフランス・ブリアンソン大会で3位となった若きリードのスペシャリストである小俣は、安楽のパリ五輪決勝のリードをどう見たのか。

「トビーへの歓声がエグかったから、それに宙斗はメンタルがやられたのかなって思いますね」

©JMPA

オリンピックという場所ゆえの重圧

 リードは自分より出番が前の選手の競技を見ることはできないため、最終競技者だった安楽はほかの選手の結果を知りようがない。ただし、ワールドカップなどを通じて、あの選手ならどれくらいまで登るかの予測ができる。

 安楽は自分の直前に登ったトビーが完登まで残り2手のポイントにたどり着いたことを正確にはわからなくても、その歓声の大きさから自身が金メダルを取るには完登に限りなく近づかなければという重圧を感じたはずだと、小俣は指摘する。

「出だしからめっちゃ動きが硬かったですからね。慎重にいこうと思いすぎたのかな。あの宙斗があんなに硬くなるのが、オリンピックっていう場所なんでしょうね」