「普段の宙斗なら一発でできたと思う」
小俣に続いて話を聞いた通谷は、ボルダージャパンカップで2023年、2024年と2年連続して決勝に進出し、ボルダーワールドカップでも今季は初めて決勝の舞台に進むなど、世界基準の課題の遠さにも適応し始めている選手だ。
その通谷が自身初めて挑んだ国際大会の2022年世界ユース選手権ではユースAのリードで優勝したのが安楽、2位がトビー、通谷は4位。ボルダーで通谷は優勝しているが、2位はトビー、3位は安楽だった。安楽とトビーの特長を踏まえて決勝を振り返ってくれた。
「宙斗にとってボルダー第4課題を登れなかったのが痛かったですね。序盤のムーブは普段の宙斗なら一発でできたと思うんですけど、手こずって時間を使ってしまった。もう1回ゴール取りができていれば、きっと完登したんじゃないかな。第3か第4のどっちかを登ってスコアを離していれば、リードであんなにバタつかなかっただろうし……」
安楽のクライミングの長所は「重心の自在性」
安楽は決勝のボルダーでは第1、第2課題は完登したものの、第3、第4課題はゴール取りに失敗。どの選手よりも完登の可能性を感じさせたものの、得点は伸ばせなかった。
安楽のクライミングの長所は、ポジション(重心)の自在性にある。強度の高い課題で重心移動をして次のホールドを取ると、すぐに安定したポジションの体勢がつくれる。それが安楽のクライミングを観ている者に、力感なく登っているように感じさせるのだが、ボルダーの第3、第4課題やリードでは、力みから自在性が損なわれていたように映った。
「きっと宙斗もわかっていたと思うんですよね。リードの上部の4点ゾーンの課題内容がトビーの得意系だってのは。だから、ボルダーの結果を引きずってしまって、リードでは登り始めから硬さが出たんだと思います。いつもの宙斗ならリードも完登できただろうし、ボルダーの4課題とも登れたと思うからこそ、悔しいんですよね」