1980年代、アイドルとして期待の星だったにもかかわらず、なぜ小泉今日子はその美しい髪をバッサリ切ったのか? 「ベリーショート事件」の真相を、構成作家のチャッピー加藤氏による小泉今日子の研究本『小泉今日子の音楽』(辰巳出版)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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「決意のベリーショート」
デビューしてからも、流されるままここに立っちゃったけど、私にはその資格がないというか、みんな本気でがんばっているのに申し訳ないな、という気持ちが強かったですね。「なんでピンクの服を着ているんだっけ、私?」みたいな思いもありましたし。(サイト『花椿』GIRLS ROCK BEGINNINGS Vol.06 小泉今日子[前編]2021年7月30日より)
軽い気持ちで送った『スタ誕』への応募ハガキ1枚で、人生が激変してしまった小泉。
「面倒くさいことになる」とわかっていながら芸能界に飛び込んだのは、どんな世界なのか、ちょっと中を覗いてみたいという、持ち前の好奇心もあったからだ。
幸運なことに曲もヒットし、ベストテン番組にも出演できたが、そのうち小泉は、こんな生半可な気持ちでやっていていいんだろうか? と自問自答するようになった。と同時に、ふと気づく。「なんでアイドルってみんな、同じような髪型をしてるんだろう?」
傍から見ると順風満帆にしか見えなかったが、そんなモヤモヤが最高潮に達し、小泉はこの頃、「もう芸能界をやめて、地元(神奈川県厚木市)へ帰ろう」と思っていたそうだ。
ただし、どうせやめるにしても、その前に1つだけやっておきたいことがあった。それは「素の自分のままで、やりたいことをやる」ことだった。