ヒラヒラした服を着たままやめて、厚木に帰ってからグレるというのも、あんまりよくないなと思って(笑)。どうせなら先に芸能界でグレてから、地元の友だちに「まあ、よくやったよ」「がんばったよ」と言われながら帰りたいというか(笑)。(前同)

 この“芸能界でグレる”を最初に実行に移したのが、あまりに有名な“ベリーショート事件”である。小泉が「事務所に“無断で”突然髪をバッサリ切った」と言われているこの一件、音楽には直接関係のないことだが、自分の意思をはっきり示し、やりたいことをどんどん実行していく小泉の原点なので、あえて行数を割くのをお許しいただきたい。

どうやって事務所を説得したのか?

 この“断髪”、小泉はそもそもなぜ思い立ったのか? 当時、ジョジ後藤という日系3世のモデルがいて、健康的なショートカットで人気を集めていた。彼女はキリンレモンのCMに出演。小泉はそれを観て「すごく可愛い!」と思った。

「そうだよ! 自分もこういうことがしたかったんじゃないの?」

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 で、バサッとやったわけだが、実際は“無断”ではなかった。ここが小泉のクレバーなところで、事務所の社長に「これから美容院に行ってきます。ちょっと短く切ってきますね」と事前に告げている。答えは「ああ、いいよ」だった。全然“ちょっと”どころではなかったのだが、小泉にしてみれば「言いましたよね、私?」である。

ベリーショートになった80年代の小泉今日子さん(画像:Amazonより)

 事務所に戻ってきた小泉を見て、社長は驚いてソファから立ち上がり、腰をガクッとさせてよろめいたという。短くしていいとは言ったが、まさかそこまで切ってくるとは……。 小泉はその姿を見て「人間って、驚くと本当に腰抜かすんだ」と知ったそうだ(笑)。