大阪弁は3段階の音源で覚えました
――映画では同じくらいの年齢役の二人だと思いますが、実際には東出さんとどれくらい離れてるんですか。
唐田 10歳差です。撮影は去年の7月末から8月末にかけての1ヶ月だったのですが、そのとき私は19で、東出さんは29歳。向こうからすれば私は子どもに見えるんじゃないかって、それが結構不安でした。でも、不安よりも楽しさのほうが大きかったですね。ただただ早く撮影に入りたいって、いつも思っていました。
――大阪弁を話すのは難しくなかったですか?
唐田 方言指導はかなり徹底して受けました。セリフ一つに対して「ものすごくゆっくりバージョン」「ゆっくりバージョン」「普通のスピード」の3段階の音源をいただいて、それを繰り返し聞いてイントネーションを覚えました。
――まさに語学の練習ですね。
唐田 そうですね。柴崎友香さんの原作は大阪の言葉が魅力の一つだと思うので、一言一言を大事にしようとがんばりました。
声フェチです。東出さんの声にゾクゾクってきました
――唐田さんが、相手に対して「麦」「亮平」と呼びかけるシーンがありますが、名前を発する一言一言の声も印象的でした。
唐田 たしかに濱口監督はとても声を聞いている方で、撮影に入る前には「僕のことを呼んでみてください。もし本当に呼ばれたなって思ったら、僕は振り向きますから」というようなワークショップを3回くらいしました。
――なかなか難しそうですね。
唐田 「濱口さん」「濱口さんっ!」って、最初は何回呼んでも振り向いてもらえなかったですね。「あともうちょっとだけど、ここらへんには来てる気がする」って教えてもらいながら、何度も何度も。私と監督と東出さんと、呼びかける練習を続けていって、撮影入りする前日にやってみたら、3人とも1回で自然と振り向けるようになっていました。呼びかける声で、こんなにも気持ちが変わってくるんだって感動しました。
――そういえば唐田さんは「声フェチ」だとか。
唐田 はい、声フェチです(笑)。台本の読み合わせのとき、東出さんの声を聞いてゾクゾクっときました。うわぁ、東出さんの声、めっちゃいい……みたいな(笑)。
――伊藤沙莉さんとも、友人役で共演していますね。
唐田 いい声ですよね。ハスキーボイス。「酒焼けみたい」ってみんなに言われて、「酒焼け言うなっ!」ってすごい笑ってました。他にも山下リオちゃんや、瀬戸康史さんや渡辺大知さんの声も素敵で、私の好きな声に囲まれた現場で幸せでした。