マザー牧場でのスカウトから、一躍世界の大舞台へ。唐田えりかさんがヒロインを演じたカンヌ国際映画祭出品作『寝ても覚めても』の撮影現場はどんなものだったのか? 舞台裏の秘話をお伺いしました!(全3回の2回目/#1より続く)

唐田えりかさん。雨あがりの東京で

「電話帳を読むみたいに、ただ文字だけを読んでください」

――唐田さんは高校卒業後に本格的に女優のお仕事を始められてまだ3年くらいですよね。『寝ても覚めても』に出演する経緯はどんなものだったんですか?

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唐田 オーディションが、かなり変わったものだったんです。まず濱口監督と他愛もない話をして、そのあとに「これ、感情を一切入れないで、電話帳を読むみたいに、ただ文字だけを読んでください」って、ワンシーンだけの台本を渡されました。言われた通りに読んだんですけど、感情も何も入れないわけですから全く手応えがないまま帰ったんです。それで次の日にマネージャーさんから「実はあれ、こういう脚本だったんだよ」って見せてもらって……。

 

――脚本を丸ごと。

唐田 はい、脚本を全て読んだらすごく感動して。脚本を読んであんなに感情移入したのは初めてでした。それから、受かっていればいいなぁって、ずっと思って過ごしていたんです。

映画『寝ても覚めても』は9月1日公開

――その思いが通じて見事つかんだのが、同じ顔をした二人の男性、麦(ばく)と亮平を好きになってしまう朝子という役です。相手役は東出昌大さん。一人二役で唐田さんの恋人を演じています。

唐田 東出さんは現場に入る前から「ごはん行こう」ってみんなを誘ってくださったり、関係性を作るために「タメぐちでしゃべろうね」とリードしてくださいました。私も距離感を詰めようと思って「普段なんて呼ばれてるの?」とて聞いたら「でっくんって呼ばれてる」って。それでいまだに「でっくん」って呼ばせてもらってます(笑)。