なぜ斎藤知事は責任を取らないのだろうか

 こうした公益通報つぶしが明らかになっているのに、なぜ斎藤知事は責任を取らないのだろう。そう思った私は7月に大阪へある人の話を聞きに行った。元神戸新聞の記者で現在はノンフィクションライターの松本創氏である。
 
 松本氏は維新政治を深く取材しており、著書には『誰が「橋下徹」をつくったか――大阪都構想とメディアの迷走』(140B/2016年度日本ジャーナリスト会議賞受賞)など多数。最新刊は編著で『大阪・関西万博 「失敗」の本質』(ちくま新書)がある。
 
 実は、松本氏は斎藤元彦氏を以前から取材していたという。ではどんな人物だったのか。
 
「知事になる前から取材していましたが、ああいうキャラクターの片鱗も見せなかった。首長、議員、経営者、記者......軒並み評判がよかった。彼の人物像は兵庫県知事就任の前と後で、明らかな断絶があります 」

斎藤知事が「ああなってしまった」ワケ

 なんと、今の姿は想像できないという。ではなぜああなってしまったのか。どう考えますか?
 
「彼の人生の目標は知事になること自体ではなかったか? というのが現時点での仮説です。だから自分は最大限に尊重されるべきだし、何でも言い分が通ると思っているのではないかと」
 
 斎藤氏の「元彦」という名前は祖父が付けた。金井元彦・元兵庫県知事から取ったという。知事のイスに座ること自体が目標となった人物は目的を達成した瞬間に豹変したという見立てである。

21年7月、兵庫県知事選で当選確実となり喜ぶ斎藤元彦氏 ©時事通信

 松本氏は「彼は知事になって何をやりたいのかわからなかった」とも述べた。そして今回の問題の本質について次のように語った。
 
「あと、やはり斎藤氏個人の資質の問題と、それに乗じた4人組(牛タン倶楽部)のように兵庫県庁の組織的問題の両面があるということには留意しておきたい」
 
 多くの報道がどうしても斎藤氏個人のエピソードに終始してる感があるが、兵庫県庁の上層部のありようにも問題があったという。

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X氏が告発した“牛タン倶楽部”とはなにか?

 問題の核心に入ってきた。ここでおさらいしよう。4人組(牛タン倶楽部)とは何か。松本氏に話を聞いた際に私の手元には「週刊文春」(7月25日号)があったのだが「この記事には兵庫問題が詳しく書かれている」というので引用する。
 
《そもそもX氏が告発したのは斎藤知事だけではない。片山副知事、県職員の総務部長、産業労働部長、若者・Z世代応援等調整担当理事の四人への言及がある》(7月25日号)
 
 ではこの4人はどこで知り合ったのか。