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初めての作業

 では、専門家としてはどのように作品に携わったのか。

「作中でのまひろは『源氏物語』を執筆する前に、別の物語『カササギ語り』を書きますが、これは史実にはない作品です。そのため、制作側が現代語で書いた内容を私が古文に訳して、それを書家さんが紙に書き写したんです。古文を現代語訳するのはこれまでさんざんやってきましたが、その逆は初めて。その時代で使われていた言葉なのかをひと言ずつ吟味しながらの作業だったので、大変でした」(同前)

百乃と実資との密会シーン

 紫式部の作風に近づけるため、実際の「源氏物語」の文章表現をちりばめたという。たとえば「カササギ語り」には終盤で、男を頼ろうとした女が、“その考えが良くなかった”と気付く場面がある。これには、「源氏物語」の第五十一帖「浮舟」で、ヒロインの浮舟が人生を回顧する場面の表現を引用した。

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「ただ、コアな大河ファンは画面を停止して文面を読むこともあるそうで、心配で仕方ないです。文法は間違っていないと思うのですが……」(同前)

研究者としての学び

 自ら役者として出演することによる研究者としての学びも多かったという。

「本格的な装束を着て、セットに立った時は興奮しました。史料や文化財で勉強していても、『袴がここに引っかかるんだ』とか、『すだれはこう開くんだ』とか、分かっているようで実際には分かっていなかったことも多くて。すごく面白かったです!」(同前)

千野氏は愛子さまの先輩

 学習院大の文学部では日本語日本文学科を卒業した千野氏。同学科と言えば、天皇家の長女・愛子さま(22)が卒業されたことでも知られる。つまり、千野氏は愛子さまの先輩にあたるのだ。

愛子さまも平安文学にご関心が

「私が准教授として着任したのは、愛子さまが4年生になられた年。残念ながら授業を受け持ったこともなく、関わりはありませんでした」(同前)

 惜しくも現代の天皇家との“袖の触れ合い”とはならなかったが、作中では今後、実資と……。その活躍に注目だ。