8月18日の放送回、オープニングのクレジットに二度登場する名前があった。一度目は「古文訳考証」の担当者として、二度目は四条宮の女房「百乃」役として。百乃は、ロバート・秋山竜次(46)が演じる藤原実資の愛人という重要な役どころだ。女優と専門家、2つの顔を持つ人物の正体とは――。
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専門家が、すだれの内側へと艶やかに誘う
「私は平安時代の物語文学が専門です。学部の卒業論文では『源氏物語』を扱いました。作品に一瞬しか出てこない端役の女房の役割について考察する、というもの。私の研究内容を知っている人は、私が女房役で出演したというのを相当面白がってますね(笑)」
こう語るのは、学習院大学文学部准教授の千野裕子氏(37)だ。
8月18日の放送回では、藤原公任の屋敷である四条宮を訪れた実資に“夜這い相手”の愛人の存在がほのめかされる。その直後、千野氏演じる百乃が登場。実資をすだれの内側へと艶やかに誘ってみせたのだった。
「コントを見ているような感覚」
高校卒業後、女優として芸能事務所に所属しながら、進学した学習院大学文学部で平安文学の研究にものめりこんでいったという千野氏。大河の出演者を選ぶオーディションでは「監修もできます」と自己アピールし、周囲を驚かせた。そんな“二足の草鞋”女優は、秋山との共演をこう振り返る。
「秋山さんは存在感がすごい。もちろんこれまでテレビでも拝見していましたが、想像以上でした。私のシーンの直前が、秋山さんと、藤原公任役の町田啓太さん、藤原斉信役の金田哲さんが話している、コミカルな場面だった。そこで秋山さんが他の2人を笑わせていたのが面白くて。コントを見ているような感覚でした」