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以降、四川火鍋チェーン『潭鴨血』(タンヤーシュエ)、北京の老舗の羊肉しゃぶしゃぶ店『東来順』(ドンライシュン)など、中国で人気の店が次々と日本にやってきた。

コロナ禍以降、在日中国人が経営する中華料理店も増えた。中国でも一時、「日本に旅行には行けないが、せめて日本料理は食べたい」ということで日本料理ブームが起きたが、日本でも同様に、「ガチな中華を食べたい」と思う人が増加。異業種から参入した経営者が開業したり、他店からコックを引き抜いたりして、本格的な料理を提供するようになった。

これらは「ガチ中華」と総称され、従来、日本にあった広東、上海などではなく、湖南、貴州、西北、武漢などの、どちらかといえば内陸部の料理を提供する店が多い。価格帯はさまざまだが、総じてそれほど高くない。

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四川料理ブームから次は「台州料理」へ

ほかに中華系デザートやカフェ専門、ビャンビャン麺などの麺料理専門、麻辣湯(マーラータン)(辛いスープ料理)専門などの店があり、「中間層」の在日中国人が訪れる。中国と同じく、日本の中国人社会も「中間層」の幅が広いので、それぞれの好みに合わせて、ガチ中華の細分化が進んだのではないか、と筆者は考えている。

近年、日本に移住してきた富裕層をターゲットにしたのか、新たな潮流として開店したのが、ガチな高級中華料理店だ。

その代表的な存在が台州料理。上海に近く、東シナ海に面した浙江省台州市の料理で、ここ数年、中国全土で急速に知名度を上げている。中国の知人によると、以前は台州という都市自体、知名度が高くなかったが、『新栄記』(シンロンジー)という高級台州料理店が21年に北京でミシュランに選ばれたことがきっかけで有名になった。

同店は95年に創業し、北京や上海の一等地に出店し、じわじわと評判を上げた。マナガツオやイシモチといった魚や蟹などの海鮮料理が有名。同店の成功を機に、他の台州料理店も台州以外の都市に出店するようになった。