「S君のことで話を聞かせてくれないか?」
そう言っただけなのに、連中は「マスコミの人?」と食いついてきて、「そうだけど…」と答えると、目を輝かせて取り囲んできた。
「ハイハイハイ、オレ、先生の携帯番号知ってますよ。5000円で買いませんか?」
「オレ、先生とSがツーショットで写っているプリクラを持っていますよ。ちょっと値は張りますが…」
「話を聞きたいんなら、オレが知っている焼き肉店でどうですか?」
そこへ一緒に取材をしていたK先輩がやって来た。
「彼らは?」
「S君の同級生らしいです」
「それは願ってもないじゃないか。取材しよう」
K先輩が「酒は飲ませんぞ」と忠告すると、連中は素直に言うことを聞いたので、焼き肉店に連れて行くことにした。
「もう死にたい」先生からの悲痛な電話
だが、「Sの親友」と名乗る男は、座席に着くなり、スパスパとタバコを吸い始めた。カラオケ店長が言っていた「2人組のうち、背が低い方」というのは、この少年らしい。
「最初はSの方が先生に『好きだ』『好きだ』って言ってたのよ。そこから付き合いが始まったんだけど、だんだん先生の方がSのことを好きになっちゃって…。先生があんまりしつこいので、Sが先生から逃げようとすると、『もう死にたい』と僕の携帯に先生から電話がかかってきた。そんな頃にSがバイクを4台盗む事件を起こして、鑑別所に行かされた。その流れで先生のことが警察にバレたんだと思う。先生がSの家に行ったとき、Sの親父さんが突然帰ってきたことがあって、先生は『16歳の女子高生です。名前は木村ユカです』なんて言っていた。Sと先生のセックスについては何も言いたくない。それを言うと、Sがかわいそう」
だが、警察筋からの話は新聞記者経由で漏れてきていた。真紀は学校を退職すると、春休み中にS君を含む教え子数人と東山公園へ遊びに行き、途中で「体調不良」を理由にS君だけを連れて自宅に行き、みだらな行為をしたという。
その後もS君の自宅やホテルで密会して、肉体関係を継続していたらしい。