テレビ朝日の看板番組となった“思い出バラエティ番組”『あいつ今何してる?』。ゲストの気になる同級生の今を探る、画期的な企画はどのように生まれたのか? そして人気の秘密とは? 番組を立ち上げたテレビ朝日・芦田太郎さんに制作秘話を伺いました。(全3回の2回目/#1より続く)
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上司から「そろそろゴールデンに直結する企画を……」
―― 2015年のスタートから数えて放送70回を迎えようとしている『あいつ今何してる?』は、先ほど伺ったように、芦田さんサッカー部時代の「あいつ」に関する個人的な体験から生まれたんですね。
芦田 そうなんです。ただその頃、上司から「そろそろゴールデンに直結する企画を……」と言われ始めていて、自分でも「ゴールデンを意識して企画を考えなきゃ」みたいな気持ちもあったんです。だから企画書には実は今の企画をメインにせず、ゴールデンで対応できそうな、あえて悪くいうと“保険”の企画みたいなものをメインにした企画書にして出しました。
―― それはどんな企画?
芦田 ちょうど何かの週刊誌で当時「東大首席のその後」みたいな特集を組んでいるのを見て面白いなと思ったんです。この切り口をテレビの企画にアレンジすれば「ゴールデン用の企画」として応用できるかもって思って、「東大首席のその後」を例にして、甲子園の優勝ピッチャーが今何してるかとか、何かで圧倒的な成績や実績を残した人は今? みたいな企画をメインの企画書にして出しました。で、「芸能人の同級生が今何してるかっていうバージョンも」という『あいつ今』の原型は企画書の後半部分に書いておいたんです。
―― 本当にやりたいのはそれだけど、あえて。
芦田 企画をまずは通すために自分なりの現実的な選択をしたんですよね(笑)。それで「企画が通った」っていうの聞いて、当然「前半部分の企画が評価されたんだろうな」って思って会議を進めていたら、部長から「企画進めてほしいのは、後ろのほうのやつだよ」って。
―― まさかって感じでしたか。
芦田 そうですね。だって芸能人の同級生とはいえ、その芸能人以外は誰も知らない素人の方と芸能人の関係性だけで見せる企画ですから。でも、部長は「それが新しくてこの企画は評価されているんだから、とにかく一回やってみろ」って。
「これ究極的に狭い番組だけど、テレビで放送するんだよな」
―― で、実際やってみてどうでしたか?
芦田 初回の#0は『お願いランキング』の枠で30分、2015年の7月にテスト的にやらせてもらえました。ゲストはアンガールズの田中さんと木佐彩子さん。同級生の取材ロケはほぼ全て自分でしたんですけど、田中さんが「今何してる」って気にしてる同級生、当たり前なんですが「普通の」40歳の男性なんですよ。この企画がなければテレビに出ることはないであろう田中さんしか知らない同級生です。カメラ回しながら「これ、誰が面白いんだっけ?」ってだんだん不安になっていって。
―― 番組として成立するんだろうかと。
芦田 しかも、田中さんとその人の思い出は、手を使わずにジャングルジムに登る「変態ごっこ」っていう遊び。それを再現してもらったんですよ、40歳の子を持つ父に(笑)。「これ究極的に狭い番組だけど、テレビで放送するんだよな。大丈夫?」って、かなり不安になりましたね。ところが、そのVTRを流してみると、スタジオでメチャクチャ跳ねたんですよ。想定外のレベルで。田中さんに至っては、なぜか泣いてました(笑)。たぶん懐かしさとか、再会の嬉しさとか、青春時代の遊びのくだらなさとか、あらゆる感情が今までにない角度から押し寄せてきて興奮してもらえたんだと思います。興奮のポイントも極めて私的だから、こっちもどんなリアクションするか事前に計算や予測が一切つかないんですよ。田中さんの場合、ハンズフリーの電話のヘッドセットをつけて営業の仕事をしている同級生の姿を見て「リュウちゃん、なんかカッコいい電話耳につけてる! メチャクチャかっこいい!」って大興奮してました。衝撃映像見て「ワーッ」みたいな、今までテレビでやりつくしたリアクションとは全く違う、既視感のない反応があったんです。
―― その人だけの、素のリアクション。
芦田 素で喜んで、素で驚いて。田中さんと木佐さんのリアクションを見て、収録を終えた放送前の時点で、「これはもしかしたらテレビとして通用するかもしれないぞ」って思いました。ただ、自分としても面白いし、企画としての新しさみたいなものを少し見え始めていましたが、それが視聴者の方にも伝わるか、そして数字につながるかは正直、自信はありませんでした。