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思わず前田敦子が「初告白」を漏らしたインタビュー術

―― 取材で気をつけていることってありますか?

芦田 最初のころ放送を観た加地さんから、「お前の相槌が早すぎて驚いた」って言われたことがあるんです。「普通だったら編集点考えて間をあけるけど、逆にあれが芸能人のテンションと会話のテンポを上げてるから良いのかもね」とも言ってもらえました。確かにおっしゃる通りで、それは会話のテンポとかテンションをできるだけ上げた状態で話してほしくて、意図的にやっています。なぜかというと、気になる同級生の思い出話をするテンションとか、興奮のバロメーターがリアルに上がっていかないと、見ている視聴者の方は「ただの思い出話」を聞いていられないと思うんですよ。楽しいエピソードを楽しそうに話している姿じゃないと。

 

―― なるほど……。

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芦田 このインタビュー仕事で印象的だったのが、前田敦子さんがゲストの回。前田さんが、初めて初恋の人を語ってくれたんですよ。「この人の今が気になってます。好きだったんです」って。でもこのとき、「それ、初めて言いました?」って確認しちゃうと特ダネの確認してるみたいで何か恥ずかしいし、会話がそれちゃう。それで僕は特に何も意識せずに間髪を入れずに「なんかすごい顔、赤くなってますよ」って言ったんですよ。そうしたら、「当たり前ですよ。テレビで初めて言ったんですもん」って、初告白を自ら認めてくれた。ちょっとしたネットニュースにもなりました(笑)。

―― 一つのインタビュー術ですね。

芦田 じっくり話を聞き出すドキュメンタリーの方法論とは違うやり方なんだとは思います。視聴者の声でたまに「インタビュアーの相槌が失礼」って言われる時はありますけど(笑)、そこは反省しつつ、めげずにやろうかなと思ってます。

©テレビ朝日

番組の原点にして真骨頂だった小椋久美子の回

―― これまでの『あいつ今』で、特に印象的なエピソードは何ですか?

芦田 難しいですね……。思い浮かぶのはゴールデン最初のトライアルで放送したバドミントンの小椋久美子さんの回です。小椋さんは、高校の全国大会の団体戦にどうしても出たかったんだけど、スポーツ推薦入学の実力者の部員数が足りなくて、人数合わせのために出ても絶対負ける一般入試で入ってきた同級生をその団体戦メンバーに入れたんです。で、その人数合わせになった同級生の今が気になっていると言ったんです。その話を聞いて僕は「自分がその人だったら、惨敗するとわかってるその団体戦絶対出たくないって思ってたと思いますよ」って小椋さんに言ったんですけど、小椋さんは「え!? そうなんですか!? 喜んでくれたはず!」って……。

―― 人数合わせで入れられたから、その人にとってはあんまりいい思い出でもなさそう。

芦田 でもその記憶の中にある意識というか思い出のすれ違いみたいなものを映像にすると面白くなるんじゃないかっていう根拠のない自信があったんです。その同級生も快く取材を受けてくれて……結果的にメチャクチャいい話になって。その同級生の方に当時の気持ちを聞くと「全国大会なんて私の実力では絶対に出れなかった素敵な場に連れていってもらえて嬉しかった」って、なんの飾り気もなく言うんです。その後も小椋久美子さんが出てるバドミントンの雑誌も全部買って、今でもブログもチェックしてるし、ずっとファンだって。

 あれは、番組の原点にして真骨頂だったと思っています。小椋さんも涙をこらえるのに必死でしたし。3年以上前ですが未だにあの回が印象的だったと言ってもらえることすらあります。そして「番組に出られてよかった」と言ってくれる芸能人の方も同級生の方も多くて、シンプルにやりがいある番組なんです。出てくださった方が「よかった」と思えるような番組を作りたいというのは、自分のポリシーにもつながっていると思います。

 

―― いい仕事だと思います。

芦田 『めちゃイケ』が大好きだったんですけど、それは『めちゃイケ』に出てるナイナイのお二人がどの番組に出ているよりも面白いと思えたからなんです。そういう、演者の方々がその番組でしか見せない最高の顔を、テレビを見ている人に届けられる舞台を作って行きたいです。それが番組作りの醍醐味なんじゃないかと勝手に思ってます。

 

#1 『あいつ今何してる?』をヒットさせた“若手社員”の「かなりトガってたAD時代」
http://bunshun.jp/articles/-/7356

#3 『あいつ今何してる?』芦田太郎プロデューサーが語る「テレビにしかできないこと」
http://bunshun.jp/articles/-/7358

写真=深野未季/文藝春秋

あしだ・たろう/1985年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。2008年テレビ朝日入社。主にバラエティを制作する総合編成局第1制作部に所属し、『あいつ今何してる?』の演出・プロデューサーを務める。『雑学王』『検索ちゃん』『学べるニュース』『ナニコレ珍百景』『関ジャニの仕分け∞』などでADを経験。3年目に『キャラブレイク』で初めての企画演出を経験。その後、『関ジャニの仕分け∞』『関ジャム完全燃SHOW』などでディレクターを務めた。現在、『ロボット旅』『ファクトリサーチTV』も演出兼プロデューサーを担当している。