後輩が『しくじり先生』を当てたときに思ったこと
―― 芦田さんと年齢は一緒だけど、期は2つ下という北野さんが『しくじり先生』で当てた時、焦りみたいなものってありましたか?
芦田 彼はもともと学生の時にインターンをやってて、その頃から僕は知ってるんで、焦りというよりも、あの大学生だった北野が! という妙な感慨と、うらやましさ半分、「俺もやらないとな」みたいなのが半分でした。
―― やらないとな、というのは?
芦田 ゴールデンタイムの番組も任されるようにならないとな、という意味です。入社5年目以下ぐらいの時期って、「若手がやりたいのはゴールデンより深夜だよ!」っていう、変なトガリがあったんですよ(笑)。これはどの若手にも“あるある”の意識だと思うんですけど。でもやっぱりゴールデンやらなきゃダメだなって気づくんですよ。会社としては大きく利益につながるし、スポンサーもたくさん付いて、営業や様々な部署が汗水流して稼いできてくれた大きな予算を僕ら制作が受け取って、その期待に応えて番組を作る。そういう全社的なものを感じるんです。これを成功させずしてテレビマンと言っていいのか? とトガっていた自分の意識が変わっていくわけですよね。プロデューサーとして小さい会社を1個経営しているぐらいの予算をいただけるわけですから。だから、一社員として今は、深夜もゴールデンも、両方でやれる力をつけたいと思っています。
志村けんが撮り方のシステムを褒めた
―― 『あいつ今』の話に戻るんですけれども、ゲストと同級生が直接会わないようにしているのはもともと決めていたんですか?
芦田 「ご対面」があると間違いなく当事者同士の温度はさらに上がって盛り上がるだろうし、迷ったところでもあったんです。ただ、二人が直接会っちゃうと、特に同級生側の一般の方がたくさんのカメラに囲まれると言いたいことをすんなり言えなくなることが出てくると思うんですよ。さらに、当事者同士の温度がさらに上がることで、より身内感が強くなり過ぎて視聴者の方の「私には関係ないや」って意識を加速させてしまうだろうなって。
―― 視聴者が引いちゃうだろうと。
芦田 そうです。ただでさえ「身内の自己満じゃん」っていまだに批判のツイート見かけるので。そこは一番気を付けています。あと、どの同級生が登場するかもゲストには教えてません。それともう一つ工夫してるのが、スタジオのセットです。実は映画館みたいになってるんですよ。
―― 映画館?
芦田 普通のスタジオだと、カメラマンとか制作のスタッフが基本、同じ空間にいて、動きも反応も見えるじゃないですか。でも、うちのセットって分からないようになっていて、カメラが壁の穴から覗いてるだけなんです。
―― 出演者だけのスタジオなんですか?
芦田 MCのネプチューンさんとアナウンサーの林とゲストしかいないんです。フロアのカンペ出す僕も、V見てる時は一回部屋を抜けるし、ゲストがどう撮られているか確認するモニターもありません。とにかく童心に戻って、同級生が出てくるVTRを見てくれっていう気持ちなんです。
―― 徹底してますね!
芦田 志村けんさんがゲストに来てくれた時に、プロデューサーに「あのシステム、撮り方は良いね」って言ってくれたらしいんです。
―― おお!
芦田 勇気づけられましたよ、本当に。ご本人から直接聞きたかったですけど(笑)。
―― 卒業アルバムを見ながら気になっている同級生を挙げてもらう時の取材は、芦田さんご自身でされているんですか?
芦田 そうですね、一番大事なところなんで。番組の入り口になるここがテンション低いと何も盛り上がらない。聞き手として、演出の立場として、ちゃんと聞いてちゃんと掘り下げるっていうのは徹底するようにしてます。