1ページ目から読む
3/3ページ目

黒岩 私の彼に対する当時の認知は、「新しいプロダクトを生み出す面白い人」。彼が大学のシラバス(授業計画)とSNSで流行っていた授業実況を連携させたシステムを作って開放していたんですが、自分は授業に出ない学生だったので、「こんな便利なものを作ってくれる人は最高だ!」と思ってたんです。

安野 その後、大学の総務課に呼び出されて怒られたけどね(笑)。

――では最初からお互いに好印象だった?

ADVERTISEMENT

安野 横で見ていたらクリックのスピードがすごくて。やっぱマインスイーパー強い人っていいな、と思いました(笑)。

黒岩 「面白い人」というのは、当時からずっと変わらないですね。あと、友だちから言われて思い出したのは、私は本当に人の悪口をよく言うんですけど、「そんな里奈から、安野の悪口だけは聞いたことがない」と言われて。

 ただ、卒業後に連絡を取り合って付き合うことになった時、告白された場所が新宿のカラオケ館で、しかも、『渇き。』っていう人間不信になるようなグロい映画を観た後だったので、いろんな意味で「今ここ?」とはなりました。

安野 あれがベストタイミングでしたよ(笑)。

 

指輪ではなくMacBookを“パカッ”

黒岩 プロポーズも、当時同棲していたきったない部屋で、指輪ではなくMacBookを「パカッ」と開いて例の提案書をもらったんですけど、「私の望む“パカッ”はそれじゃない!」と言って、ベタなプロポーズを仕切り直してもらいました。

――結婚にあたって、家事についての取り決めもあった?

黒岩 お互い一切何もしない、という意味での折半をしていますね。その結果、家がひどいことになってるんですけど。

安野 ある程度以上に散らかっていると、むしろ下手に手を付けてしまう方がどこに何があるかわからなくなってしまうので、2週に1回ハウスクリーニングの方に来ていただいて、それで終わりです。家の「散らかり度合い」を許容する方が、実は家事コストを極端に下げられるという考え方。

黒岩 それはプロポーズの時も言ってましたね。むしろ私の方が明らかに家事の苦手度は上回っていたので、「この契約、乗れるな」と。

 あと、お互い自分のご飯は自分で面倒見ることも最初に合意しました。私自身、結婚する時には既に仕事をしていて、毎日夫から食事の有無を確認されるのはキツいなと思っていたので、それも良かった。

 

●自律的な2人が当時法律婚を選んだ理由や、31歳の結婚生活の危機の対処方法、夫の健康や身だしなみのケアを求められる政治家の妻像への考え、そしてデジタル民主主義の実現に向けてなど、対談の全文は『週刊文春WOMAN2024秋号』でお読みいただけます。

文・小泉なつみ 写真・橋本篤

あんのたかひろ/AIエンジニア、起業家、SF作家。1990年生まれ。開成高等学校卒、東京大学工学部システム創成学科卒業。ボストン・コンサルティング・グループを経てAIスタートアップを2社起業。

くろいわりな/編集者。1990年生まれ。桜蔭学園高等学校卒、東京大学文学部国文学研究室卒業。KADOKAWAを経て、2020年文藝春秋入社。『青くて痛くて脆い』(著:住野よる)、『指先から旅をする』(著:藤田真央)、『令和元年の人生ゲーム』(著:麻布競馬場)、『婚活マエストロ』(著:宮島未奈)などを担当する。