ドジャースの大谷翔平(30)が19日、マイアミで行われたマーリンズ戦で、メジャー史上初の「50本塁打、50盗塁」を達成した。前人未到の挑戦を前に大谷にまつわる“5つの秘話”に迫った「週刊文春」の記事を公開する(初出:「週刊文春」9月12日発売号。年齢、肩書は当時のまま)。

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 8月29日のオリオールズ戦。始球式に現れたのは、大谷家の愛犬・デコピンだった。ボールを口にくわえ、マウンドからホームベースで構える大谷のもとに走り寄ってハイタッチ!“ワン!”ダフルな投球で球場を沸かせた犬の名前を巡り、日本国内では熾烈な「商標権争い」が繰り広げられている――。

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「コーイケルホンディエ」という犬種

「デコピン」をめぐる商標登録の争奪戦が始まったが…

 その名がお披露目されたのは、昨年12月、大谷のドジャース入団会見だった。

「“デコピン”と言うんですけど……」

 はにかみながら明かす大谷の姿を各局こぞって速報し、愛犬の名は一気に世界中に知れ渡った。

 間もなく始まったのが、「デコピン」の名称をめぐる商標登録の争奪戦。個人・法人によって、約3カ月で13件の商標が出願されたのだ。

 ところが――。すでに「デコピン」を商標登録していた企業があった。先見の明を持つこの企業について経済誌記者が解説する。

「少年ミゲルが『消〜臭〜力〜♪』と熱唱するCMで有名な、消臭芳香剤大手の『エステー』です。消臭芳香剤市場では、あの小林製薬と鎬を削っています」

車用の消臭芳香剤に“デコピン”が使われていた

 “デコピンブーム”に乗じて、ライバルを蹴落とす――。そんな企業戦略を描いているのか。

 調べてみると、エステーは2010年に商標「デコピン」を登録。これは車用の消臭芳香剤「キャレーヌ・デコピン」(現在は製造終了)の販売に合わせた動きだった。

「キャレーヌ・デコピン」

 エステー広報に尋ねると、次のような回答があった。

「同製品はピンタイプでエアコン吹き出し口に差し込む消臭芳香剤。運転席から見える部分がデコレーションされており“デコピン”と名付けられました。(再販、大谷とのコラボは)現在は考えていません」