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2018/05/13

実務は「若いスタッフたちにおまかせ」

 いまでは、山本さんが経営するグループは急成長、10店舗を数える。業態は、ベーカリーだけでなく、パニーニ屋、フルーツサンド専門店などさまざま。名前も、コピーライターが起用され、「フツウニフルウツ」「なんとかプレッソ」など自由そのもの。パン業界プロパーではなく、他業界からやってきた山本さんの経営は実に自由なのだ。

パン売り場の風景

 各店舗の実務は若いスタッフたちにまかせている。

「そのほうがモチベーションが上がりますし。『また俺の知らないパン出てる』ってインスタで知るぐらいで(笑)。口を出すより、まかせたほうが売れますから」

 厨房ではパン職人たちが切磋琢磨しているが、山本さんから現場に怒ることは一切ない。徒弟制度の伝統が残っていて、上下関係が厳しい…そんなパン業界のイメージとは真逆。

「いまはSNSの時代。転職なんかスマホで簡単にできる。怒られたあと、休憩時間にSNSでつぶやいたら、『ありえねー』『やめちゃいな』ってコメントがきて、そのまま辞めるなんてざらですから。ストレスをかけないように気をつけてます」

 ここでもSNS。少子化の時代、パン業界ではあっちこっちで「人が来ない」の悲鳴が上がるのに、「パンとエスプレッソと」にはあてはまらない。広告を出さなくても、Instagramで告知すれば応募がくる。まかせられる人材が集まる理由だ。

「みんな、『パンとエスプレッソと』ってこういう店だって知って入ってくるから、まかせてもそんなにぶれないんですよね。研修もマニュアルもないけど、教えなくてもわかっている。『辞める』といっても放置。一切引き止めないと決めています。だけど、出戻りOK。他のところを見て、うちのよさがわかる」

厨房で働くスタッフも若い

 不動産業時代のノウハウを生かし、パン屋として快進撃をつづける山本さん。かっては数千万が一瞬にして転がりこんできたはずだが、パンの利益は1個10円、20円の世界。一度は見切ろうとしたパンの仕事は、山本さんを幸せにしたのだろうか?

「不動産屋ってみんな飲食をやりたがりますよね。不安なんですよ。不動産っていつかは落ちるもの。東京オリンピックが終わったら、絶対落ちるでしょ。最近は思いますね、パン屋やってよかったって」

パンとエスプレッソと

東京都渋谷区神宮前3-4-9
03-5410-2040
8:00~20:00
第2月曜休
http://www.bread-espresso.jp

写真=池田 浩明

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