薬には決して一緒に口にしてはいけない飲食物がある。それを誤ると薬の効果が弱まるだけでなく、血圧の急降下、意識障害などむしろ体に悪影響を及ぼす。降圧剤や睡眠薬など身近な薬の意外と知られていないリスクとは。〈本記事では薬の危険な食べ合わせ「完全リスト」より、「睡眠薬」「抗生物質」編を抜粋して紹介する〉
国際医療福祉大学三田病院薬剤部長で、同大成田薬学部の富田隆教授が語る。
「薬をお茶や清涼飲料水などと一緒に飲んだ場合、薬の種類によっては吸収が遅くなってしまい、薬剤の効果が弱くなる恐れがあります。他にも、薬と飲食物には相互作用のあるものが多いので、注意が必要です」
抗生物質服用後、2時間は牛乳を控えて下さい
季節の変わり目になると、のどの痛みを起こす咽頭炎や扁桃炎、ウイルスや細菌から来る副鼻腔炎など、耳鼻咽喉科のお世話になることも多い。その場合に処方されることが多いのが抗生物質(抗菌剤)である。イシハラクリニックの石原新菜副院長は、抗生物質を使用する際は牛乳に要注意だと語る。
「クラビットなどニューキノロン系の抗生物質は、牛乳と一緒に飲むのは止めてください。牛乳のカルシウムが、効果を減弱する恐れがあるからです。服用後、2時間は牛乳を控えて下さい」
ニューキノロン系の抗生物質は、呼吸器疾患、膀胱炎などの泌尿器疾患でも処方されることがある。
「他にも、牛乳と相性の悪い抗生物質があります。ニキビなど肌の治療薬として処方されやすいテトラサイクリン系抗菌剤(ミノマイシンなど)です」(ひまわり医院(東京都)の伊藤大介院長)
抗生物質を飲んだ後、2時間以上あけていれば、影響はほぼなくなっているとされる。
睡眠薬×酒は最悪の組み合わせ
一方、年齢問わず使用者の多い睡眠薬にも注意して欲しいと語るのは富田教授だ。特に睡眠薬と寝酒は最悪の組み合わせだという。
「アルコールを飲んだ後に睡眠薬を服用される方が多いことを心配しています。入眠剤や睡眠導入剤では、レンドルミンやマイスリーがよく処方されますが、これらとアルコールを同じタイミングで飲むと、ふらつきやめまい、意識障害を起こして転倒の原因になる」
そもそも、高齢者は薬を代謝する腎臓の機能が低下している。若い頃と同じ量の睡眠薬を服用すると、尿による排出効果が衰えているため、効きすぎてしまうことがあるという。そこにアルコールの作用が加わると思わぬ危険が生じるケースもあるので、絶対に避けて欲しい。