作品自体としてもその公演は、僕自身がこれまで観たなかで「我が人生ベスト舞台」と言いたくなるスゴみがありました。そのなかでも剛さんは、ふっ切れたような堂々たる芝居を見せていました。あれほど役に入り込んで演じる人を、ほかにあまり見たことがありません。
「蒲田行進曲」以降、剛さんは明らかに芝居が変わりました。つかこうへいさんの演出が、役者・草彅剛という存在を生み出したといえるでしょう。草彅剛の天性を見抜き、適切に伸ばした手腕はさすがのひとことで、演劇人・つかこうへいさんの偉大さもひしひしと感じました。
「オレの台本だけ、手を抜いてるんじゃないの?」
覚醒後の剛さんは、役者として独自の境地を開拓していきます。先日、テレビ番組で言っていましたが、あるときまでは台本を読み込み、事前に考えを尽くして役づくりをしていたそうですが、スタイルを変更したと。なんと自分のセリフ以外は目を通さないとも言っていました。天性の才能を発揮しまくっています。
役者としてすごい存在になってからも、番組で剛さん向けのコントの台本を書くことはたくさんありました。そういうときに剛さんに、冗談っぽく言われたことがあります。
「オレの台本だけ、手を抜いてるんじゃないの?」
と。たしかに剛さんに向けた台本は、冒険したものも多かった。それは彼の空気感で彼しか作れない世界観をつくれてしまうからこそ、番組に足りないスペースを見つけて、作家も演出も、彼で冒険的・実験的なことをしたくなるのです。
「深夜枠の番組を韓国で撮影したい」
草彅剛さんが役者としての評価をどんどん高めていくなか、さらに驚かされたのは、2001年からフジテレビ系の深夜番組で「チョナン・カン」を始めたことです。
あるとき『SMAP×SMAP』の打ち合わせをSMAPマネージャーの飯島三智さんとしていると、剛さんが駆け寄ってきて、深夜枠の番組を韓国で撮影したいと言ってきました。
そのころはメンバーが持ち回りで、深夜の放送枠で番組をやることになっていたのです。そこで韓国をテーマにした番組をやりたい、韓国に行ってスターになりたいというのです。