穏やかな朝の通学風景が一変したのは、9月18日午前7時55分のことだった。

 中国・深圳(シンセン)の日本人学校。校門から約200メートルの場所でひとりの男が、母と2人で通学していた10歳の児童に狙いを定め、果物ナイフを突き刺したのだ。「救命!(助けて)」という母の悲鳴があたりに轟いた。倒れ込む児童と嗚咽する母の傍らで、男は呆然として立ち尽くしていた。

日本人学校の校門前には献花が ©時事通信社

事件が起きたのは反日感情が高まりやすい「柳条湖事件」の日

「容疑者の男は持っていた果物ナイフを離し、無抵抗のまま身柄を拘束されました。一方、男児は腹部と大腿部を刺され、病院に救急搬送されましたが、翌日午前1時36分に死亡が確認された」(全国紙記者)

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事件現場は学校から200メートルの場所 ©時事通信社

 事件が起きた9月18日は、中国人にとって特別な意味を持つ。93年前の1931年、旧日本軍が南満州鉄道の線路を爆破。中国軍の仕業に仕立て上げ、軍事行動を起こした末、中国東北部を占領した。これが満州国の建国に繋がったとされる。

「この柳条湖(りゅうじょうこ)事件が起こった9月18日は中国で『国恥の日』と称され、反日感情が高まりやすい日とされてきた。容疑者は、この節目の日を選んで反日感情を示す行動に出た可能性があります」(同前)