人生で初めての“バズ”を経験
それから数時間後、いいねとフォロワー数の急増、テレビ局からのDM、さらには自分の投稿がトレンド1位になるなど、人生で初めての“バズ”を経験する。動画の収益に期待を膨らませるタパ子だったが、加害者が有名人であったこと、そしてテレビで自分の動画が流れた時に、お金よりも遥かに自分の心煌めかせる“アレ”に目覚めてしまう。
――“私”の動画が流れている、“私”の名前が放送されている……
つまり、承認欲求が満たされる快感である。
倫理観さえも抜け落ちていく
以降、痴漢の常習犯を撮影してネットに晒すなど、更なる過激な“バズ”を求めるようになるタパ子。フォロワーが増えると共に彼女に恨みを持つ人も増え、暗雲立ち込めるようなサスペンス展開が彼女を待ち受ける。同時に、いつの間にか人の心はおろか、倫理観さえも抜け落ちていく彼女の姿に恐怖を覚えるが、1巻を読み終えた時に本当の怖さは別のところにあると気づく。
それは、タパ子に恐怖し軽蔑するあまり、いつか転落すれば良いと彼女に罰が当たるのを願っている自分自身……。きっと今の私の顔は、タパ子の配信で自分の正義を信じ、処罰感情を満たしている視聴者と何も変わらない。自分には関係のない話だと思いながらも、読後に抱くこの薄暗い感情がある限り、決して彼女とは無関係ではなくむしろ地続きであり、例えるなら彼女の配信の中にいるような気がするのだ。それが『死ぬまでバズってろ!!』の一番怖いところなのかもしれない。