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「ウワァ~、スゴイや!」

 すると、配達員はまじまじと配達票を見返し、

「高倉健さん!? 同姓同名ですか」

 私は、「いえ、俳優の、ご本人です」と答えた。

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 配達員は、「じゃ、貴方は女優さん(笑)」

 私は「ちょっと、待ってね」と奥の部屋から健さんと私が写る写真を持ってくる。

 配達員はその写真を見て「ウワァ~、スゴイや!」

 

 私はどんなに喜んだか。

 ベビーカー、それもまだ購入していない最後の大物。よくぞこの品物を贈ってくださった!

 後でわかったことだが、撮影現場でいつも色々よくしてくれる小道具の市ちゃんがこっそり知らせてくれたらしい。

 そこには健さんらしいユーモアにあふれる手紙が添えられていた。

 谷 充代 様
 お姫様御誕生本当におめでとうございます。
 心からお祝い申し上げます。
 どうぞ性格の飛び切りいい女性にお育てください。
 花婿候補の一人として強く希望します。
 お姫様のお散歩のお供に使って戴ければ嬉しいです。
 年の瀬に向かいます。呉々も御身体お大事に。
 御主人様にもよろしく。

 平成2年12月6日
 高倉 健

 健さんの真心がそこにあった。

 私は「三つ子の魂百まで」という古の訓を守り、しばらくは育児に専念するつもりでいた。その間、健さんから「読んでおいたほうがいい」と勧められていた本と向き合うことができた。

 中でも高倉健と縁あった映画監督のノンフィクション本は圧巻だった。

 健さんに「本を読め」とアドバイスした監督の書『夢を吐く 人間内田吐夢』。

 網走番外地シリーズの生みの親、『石井輝男映画魂』。

 東映任侠映画の中核を担った、『将軍と呼ばれた男 映画監督山下耕作』。

 健さんが21本のコンビを組んだ降旗康男監督とは一献を傾ける機会があった。