暑さが落ち着き、秋が深まってきたこの頃。実りの秋は、野生動物にとっては餌を得る大切な時期です。ツキノワグマも餌を求めて活発に活動します。

 そして寒くなると、野生のツキノワグマは「冬眠」へ。では、動物園で暮らすツキノワグマは、冬をどのように過ごしているのでしょうか。

 東京・上野にある恩賜上野動物園は、「ツキノワグマ(ニホンツキノワグマ)」の冬眠に取り組む施設のひとつです。ツキノワグマの冬眠は2006年から始まり、冬眠中の様子を見せる「冬眠展示」もおこなっています。

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昨年12月に筆者が上野動物園を訪れた際に見たツキノワグマ 著者撮影

 今年の4月13日には、上野動物園の公式Xで、ツキノワグマの「クー」の冬眠明けが報告され、目覚めて青草を食べる姿も投稿されました。

 来たる冬も同様に、上野動物園のツキノワグマは冬眠に入ります。飼育下の冬眠とは、どんな様子なのか。飼育員はどのように冬眠の環境を作り、誘導しているのでしょうか。

 今回、20年近くツキノワグマの冬眠に取り組んでいる上野動物園に取材を申し込みました。上野動物園で飼育展示課長を務める鈴木仁さんに、冬眠の準備や冬眠中の様子などお話を聞きました。

目標は30%増!? 夏が過ぎたら始まる冬眠準備

 上野動物園には、「クマたちの丘」と呼ばれるクマの展示ゾーンがあります。

 ツキノワグマは、現在2頭。メスの「クー」と「ウタ」が暮らしています。

「クー」は推定19歳(推定2005年1月生まれ)で、上野動物園で初めて冬眠に取り組んだクマです。性格はわりと穏やか。日中は放飼場の中央にあるクマ棚の上で寝ていることが多いです。好きな食べ物はリンゴやクマ用固形飼料です。一方、「ウタ」は2011年2月25日生まれの13歳。上野動物園で冬眠中のクマから誕生しました。活発な性格で、やはりリンゴやクマ用固形飼料が好きです。

「ウタ」はニンジンも好みますが、「クー」は食べません。また、「クー」は胸にある白い月の輪が大きく目立ちますが、「ウタ」は月の輪が小さめで中央に切れ込みが入っているのが特徴です。いちばんわかりやすい見分けるポイントだと教えてもらいました。

 上野動物園では、冬眠をさせるツキノワグマは基本的に1頭としています。これまで、クーとウタはほぼ交互に冬眠に入り、2023年冬から2024年春は、クーが冬眠をしました。。

 この冬眠に向けて、動物園ではどのような準備をしたのでしょうか。