冬眠時、餌は一切食べず、水もほぼ飲まない
冬眠中、クマはずっと眠り続けているのでしょうか。おなかがすいたり喉が乾いたりはしないもの? 冬眠中の餌と水事情を聞いてみました。
「冬眠中は、野生のツキノワグマと同様に、餌を一切食べません。水も基本的に飲みませんが、時折飲むことが確認されているため、上野動物園では飲みたいときに飲めるように準備しています。何も食べず、水もほぼ飲まない状態ですので、排泄も基本的にはありません」(鈴木さん)
時折おしっこはするけれど、うんちはしない。そして、クマはずっと眠り続けているわけではなく、時折動くこともあります。
「寝返りなどで体勢を変えたり、おしっこをするときに動いたり、冬眠ブースと準備室を移動したりすることも観察されています。また、冬眠時に体温が4~5度ほど下がり、呼吸数や心拍数は1/5~1/10ほど落ちることもわかっています」(鈴木さん)
「冬眠」といっても動物によってそのスタイルはさまざま。全く動かない動物もいれば、体温を0度近くまで下げる動物もいます。ツキノワグマの場合は、活動量を抑え、餌を食べず排泄をしないスタイルです。
では、昨年冬眠をした「クー」はどんな様子だったのでしょうか。
「現場の担当者からは、クーは眠りがあまり深くなかったという報告を受けています。冬眠明けの1カ月ほど前の3月中旬ごろから、ときどき起きたり動いたりしていたようです。担当者は『いつ冬眠明けになるか』と落ち着かなかったと聞いています。冬眠に入るタイミングはある程度コントロールできるようになりましたが、目覚めはクマ次第です」(鈴木さん)
冬眠明けの判断はアレが目印
冬眠時にちょこちょこ起きたり動いたりすることもあるツキノワグマ。では何をもって「冬眠明け」と判断するのでしょうか。
「前回のクーの場合、冬眠ブースから準備室に移動して水を飲み、青草を食べたことから冬眠明けの判断に至りました。ただ、これは珍しい例で、冬眠後に初めて糞をしたときを目安に判断することが多いです。クーは、水を飲んで草を食べるという明らかな行動が見られましたので、排泄前ではありますが、冬眠を終了としました」(鈴木さん)
冬眠明けの目安となる初めてのうんちは、「留め糞(とめふん)」と呼ばれています。冬眠の終わりを告げるこの糞、ちなみに量を聞いてみると、どっさりではなく少なめとのことです。
冬眠明けの体重については、「きれいにベース体重と同じレベルまで戻っていました」と鈴木さん。
「夏の終わりのクーの体重は87.3kgで、冬眠前で113kg。そして冬眠明けの測定では、体重は90.5kgでした。ほぼベース体重に戻ったことがわかります」(鈴木さん)