巨人の菅野智之投手(34)が今オフに海外フリーエージェント(FA)権を行使し、MLBに挑戦することを表明した。菅野は過去、14勝2敗で3度目の最多勝に輝いた2020年オフにポスティングシステムでのメジャー移籍を目指し、断念していた。
その後、成績は下降線だったが今季は15勝3敗と完全復活。再び夢に向かって動きだしたが、MLBの各球団には4年前に生じた“不信感”が根強く残っているという。
今回のMLB挑戦は10月4日深夜、米スポーツ専門局ESPNの敏腕記者ジェフ・パッサン氏のスクープで発覚した。同氏が情報筋からの談話として「菅野がこの冬に海外FAで大リーグにやってくる」と紹介したのだ。
翌5日には、クライマックスシリーズ(CS)に向けた東京ドームでの全体練習に参加した菅野がメディアの取材に応じた。
「球団に自分の意向を伝えさせてもらった。向こう(米国)でプレーするという気持ちでいる。20年に行けなかった時の、そういうのはずっと僕の中であったので、 そういう決断をしました」
4年総額80億円近い「恵まれたオファー」を蹴った理由
日本一を目指すポストシーズンに突入する直前、不本意なタイミングではあったかもしれないが、メジャーを目指す意思を明確に示した。
前回MLB挑戦を断念した2020年は新型コロナウイルス禍のピークで、MLBのシーズンも本来の162試合から60試合に短縮され、翌年の開催条件も不透明だった。無観客開催で経営難に陥っていたチームもあったが、それでも31歳のベテラン菅野に対し、NPBトップクラスの投手にふさわしいオファーを提示したとされる。
米大手マネジメント会社の代理人は当時をこう述懐する。
「メジャーでは30歳を超えると長期契約が厳しくなるのですが、菅野には6球団がオファーを出し、4年総額80億円近い額を提示した球団もありました。最大級の評価を受けた理由は、17年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の準決勝でアメリカ相手に好投していたこと。十分に恵まれたオファーだったと言えます」
2020年に菅野がMLB挑戦を断念した理由自体はたしかに理解できる。
コロナ禍で予定通りのキャンプ開催さえ危ぶまれ、前年にMLB1年目だったレイズの筒香嘉智外野手(現DeNA)やレッズの秋山翔吾外野手(現広島)が困難な開幕前の調整を強いられていたこともその1つだ。
他にも、まだシーズンで162試合実施されるかどうかも確定しておらず、年俸が試合数に応じて削減される可能性もあった。コロナ禍の行方が見えない中で新天地を迎えることに菅野が不安に感じるのも仕方なかったとは言える。
「それにしても……」と前出の代理人が語る。