開催場所と日程が決まった史上初の米朝首脳会談。安倍晋三首相は、政権の浮揚をかけて、その前にドナルド・トランプ米大統領に会い、日本にとって最重要の「拉致問題」の提起を、と念押しする計画だという。
しかし、その出鼻をくじく報道が会談1カ月前に伝えられた。北朝鮮の朝鮮中央通信が、拉致問題を「解決済み」と切り捨て、日本は「朝鮮半島の平和の流れを阻もうとする稚拙で愚かな醜態」と非難したのだ。トランプ大統領は北朝鮮を真剣に説得するだろうか。
そもそも「拉致」は安倍首相にとって、個人的にも1丁目1番地と言える外交課題。日本はなぜ、こんな扱いを受けるのか。
日本は、昨年来の核・ミサイル問題で「最大限の圧力」と米国追随の強硬な対北朝鮮外交を推進してきたが、実は最後の段階で大きい「誤算」があった。
(1)米・韓大統領は不仲と思い込み
2016年の米大統領選後、いち早くトランプ・タワーに出向いて、個人的に親交を深めた「シンゾウ・ドナルド関係」。だが今年2月の平昌五輪以後、南北・米朝の対話が前進する中で、日本は蚊帳の外に置かれる羽目に陥った。一体何が起きていたのか。
安倍首相は昨年来、トランプ大統領と韓国の文在寅大統領の関係は非常に悪いと固定的に信じ込んでいたようだ。
昨年9月21日(日本時間22日)、ニューヨークで行われた日米韓の首脳会談。3首脳は、北朝鮮の政策を変更させるため、「結束して圧力を強化する方針」で一致した。しかしその裏で、韓国政府はまさにその前日、国連児童基金(ユニセフ)や世界食糧計画(WFP)を通じて北朝鮮に対する800万ドル(約8億8000万円)相当の人道支援を実施することを決定していた。
これに対し、日米首脳は文大統領に北朝鮮向け人道支援は「慎重に」対応するよう求めた。実際、トランプ大統領は安倍首相に文大統領に対する不満を漏らしたという情報もあった。
確かに米韓関係は、米韓自由貿易協定(FTA)の見直しや、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備をめぐって、何度か関係がぎくしゃくした。
しかし、昨年11月29日に北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の「火星15型」を発射して、金正恩委員長が「国家核戦力完成の歴史的大業」を成就したと宣言、さらに新年の辞では、平昌冬季五輪の開催などで今年は「民族史に特記すべき年」になるとして、「南北会談」を提案した。これ以後、情勢は大きく変わった。