温家宝元総理の家族の「27億ドル巨額蓄財」を手助け

 中国の実業家で、かつて温家宝元総理の家族の27億ドルもの巨額蓄財を前妻のホイットニー・ドュアン氏とともに手助けしたデズモンド・シャム氏が「文藝春秋」のインタビューに応じた。

デズモンド・シャム氏 ©文藝春秋

 2017年に元妻ホイットニー氏が中国共産党に拘束され忽然と姿を消したことを受け、デズモンド氏は2022年、告発本『私が陥った中国バブルの罠 レッド・ルーレット』(草思社刊、原著は2021年刊)を上梓。本書は中国共産党最高幹部の金と権力をめぐる内幕を暴露し、中国では発禁本となっている。現在イギリスに渡り、母国には二度と戻れないというデズモンド氏が明かす中国共産党の「本質」とは?

「ホイットニーは温家宝夫人の張培莉に食い込み、平安保険(ピンアン)の未公開株の取得などで温一家に巨額の富をもたらしました。温家宝自身は蓄財にほとんど直接関わっていなかったのですが、夫人にとってホイットニーは、実の娘以上に信頼できる存在でした。

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(中国共産党の拘束により)忽然と姿を消したホイットニーは、2021年9月、突然、再び私の前に現れました。失踪から丸4年。暴露本刊行のわずか2日前のことでした。

 ホイットニーは、2日後に迫った本の出版を何とか取りやめるよう強く求めてきたのです。

中国共産党の内幕を暴いた著作

『私たちの成功は共産党のおかげだ』『愛国、愛党の思いはないのか』『恩知らず』『共産党に仇をなす者に未来はない』……。

 彼女は4年間で党に洗脳されたのか、それとも電話の向こうで同席する『誰か』がそう言わせているのか。いずれにしても、かつての彼女からは聞いたことのない言葉でした」

習近平による温家宝への『警告』

 デズモンド氏によれば、ホイットニー氏を拘束したのは、共産党中央規律検査委員会だったという。いかなる法律の制約も受けずに、恣意的に何年でも被疑者を拘束できる組織だ。

「共産党と中国政府は現在まで一度たりとも、彼女を拘束した理由も、拘束の事実そのものも公表していません。法に基づく処分ももちろんない。この事実は、彼女の拘束が『政治的な目的』によるものだったことを物語っています。その裏には熾烈な『権力闘争』があり、この拘束は習近平国家主席による温家宝への『警告』だったと私は分析しています」