「次々と人が消える」と噂されるマンションを舞台に、怪しげな住人の秘密を知ってしまった配達員が事件に巻き込まれていくエンタメミステリー『あの人が消えた』(全国公開中)。監督は人気ドラマ「ブラッシュアップライフ」などで知られる水野格、主人公の配達員を高橋文哉が演じる。初タッグを果たしたふたりに、撮影の舞台裏を語ってもらった。

 

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着想を得たのはコロナ禍

―今回、監督は自身の体験に着想を得てオリジナル脚本を執筆したそうですね。

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水野 アイデアを着想したのは2020年です。当時、コロナ禍で在宅を余儀なくされ、同じマンションの住人たちと顔を合わせる機会が増えました。こんな人が住んでいたのかと新鮮に感じる一方で、自分は隣人について何も知らないことに改めて気づいたんです。極端な話、隣の部屋でバラバラ殺人がおこなわれている可能性もなくはないし、逆にすごく良い人が住んでるのかもしれない。

高橋 たしかにそうですね。

水野 さらに、ずっと家にいるものだからAmazonの利用回数が増え、配達の人が毎日家に来るようになりました。僕の部屋は玄関から居室が丸見えで、応対するたびに生活を覗かれている気分になったんですね。ほかの部屋も同じ間取りだろうから、マンションの住人たちについて一番詳しいのは配達員かもしれないな、と。この人が、各部屋の玄関の隙間から得られるわずかな情報をもとに、住人の異変に気づいたら……などと妄想しているうちに映画の企画になっていました。

配達員さんのことを毎回観察

―高橋さんは配達員を演じるのは初めてですよね。

高橋 出演が決まってからは、家に来る配達員さんのことを毎回観察していました。いつもは置き配や宅配ボックスを利用することが多いのですが、帰宅時間をお伝えして、対面で受け取るようにして。

水野 文哉くんがいたら配達員さんも驚くだろうね。

高橋 伝票にある名前と顔を見比べて「あっ!」と言われたことはあります(笑)。