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 一方で苦しんだのが打撃陣だ。昨年はリーグトップだったチーム打率が5位に低迷。故障者が多く、広島からFAで獲得した西川龍馬外野手だけではカバーできなかった。

 主力の流出による戦力不足に怪我が重なる不運な状況の中で、なんとかチームをまとめてきた中嶋監督を責める声はほとんど聞かれなかった。

 しかし中嶋監督自身は、チームへの希望を失いつつあったのかもしれない。5位でシーズンを終えることが決まった後のコメントにも失望感が滲んでいた。

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エースだった山本由伸はドジャースで活躍中 ©時事通信社

「人って慣れるじゃないですか。全力疾走であり、攻守交代であり、そこだけはしっかりやってくれと。どれだけ言っても、それが改善されなかった部分が慣れなんだと思う。1年間通してやるっていう最低限の約束をしていたんですけど……」

 そう言って、自身の求心力と選手たちのモチベーション低下が辞任の要因になったことを匂わせたのだ。

 加えて、戦力不足が解決されるメドが立っていないことも辞任の遠因の1つだろう。

 福良GMとは日本ハムコーチ時代の同僚で、オリックスでもまさに二人三脚で絆は固いと見られていた。しかし、その福良GMの度重なる引き留めを受けても辞任の決意は揺らがなかった。

パ・リーグ3連覇を果たし、優勝セレモニーで歓声に応えるオリックスの中嶋聡監督 ©時事通信社

「恐らく中嶋監督は、自分のチーム作りと球団の編成方針にズレを感じていたんだと思います。

 毎年のように主力が抜け、ソフトバンクに抗うための補強が見込めない中で、現場のやり繰りは監督が一手に引き受けなければならない。ポスティングやFAの案件には福良GMも手が出せず、実質的に球団に任せるしかないジレンマはあったと思います。なによりオリックスの監督として3連覇という申し分ない実績は積んだので、引き際としてもちょうどいい。そして、一度決めたらテコでも動かない性格ですからね」(前出・元NPB球団監督)

西武やDeNA、日本ハムでの監督復帰説も…?

 今回スパっと身を引いたことで、他球団を含め監督“再登板”への見通しも明るいという。

「オリックスが今年勝てなかった責任は誰が見ても中嶋監督にはなく、監督としての手腕への評価にキズが付くことはありません。まだ55歳と若いですから、オリックスでの再登板だけではなく、他球団から声がかかる可能性は十分にありえます。辞任の理由を“慣れ”と言ったのも、ことを荒立てないためでしょう。フロントへの不満をぶちまけてしまえば、他の球団も声をかけづらくなりますからね」(同前)

 中嶋監督は現役時代に、オリックスのほか西武、横浜(現DeNA)、日本ハムでもプレーしている。今後については「とりあえずゆっくりします」と言い残したものの、球界は休む暇を与えてくれないかもしれない。