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「トランプが苦戦しているなんて、フェイクニュースさ」

 ボランティアをしていて、強く印象に残っているのは40代の白人男性。

 スマホ上に現れる選挙用のアプリに表示された地図に従って、家を訪ね、トランプへの投票を求めるというのがボランティアの仕事。

 戸別訪問を始めて間もないころ、ハリー(当時73)という白人男性の家を訪ね、アンケートを取りはじめようとしたところ、ウォルターと名乗る40代の息子が私たちの間に割り込んできた。

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「なにぃ、トランプ陣営のボランティアだって。ならば、オレがアンケートに答えてやるよ」と挑みかかるように言う。赤のトランプの帽子を被り、迷彩柄のTシャツにもトランプの文字があった。その容貌には、映画『シビル・ウォー』(アレックス・ガーランド監督)に出てくる、赤いサングラスをかけた狂気をはらむ民兵を連想させる不気味さがあった。

 アプリの指示に従ってアンケートを始めると、ウォルターはこう言い放った。

「もちろん、トランプに投票するよ。なぜかって? トランプはこれまでオレたちみたいな労働者のために、多くの約束事を果たしてきてくれたからだ。経済状態は最高だろう。株価は右肩上がりだ。大統領選で、トランプが苦戦しているなんて言っているメディアもあるが、そんなのは全部フェイクニュースさ。トランプには、どうしたって、もう4年、大統領をやってもらわなければならないんだ」

 終始にこりともせず、こちらを値踏みするような視線を外さずに話し続ける。強烈なトランプ支持者でありながら、強い猜疑心がにじみ出ていた。

 しかし、これはボランティア活動なので、写真を撮ることはできなかった。

ミシガン州議事堂前に集まったトランプ支持者 2020年11月

「トランプ支持者」と「トランプ信者」の違い

 2020年11月、テレビのニュース番組が、ジョー・バイデンの大統領選の当確を打つと、私はすぐ車に乗って、アパートから10分離れたミシガン州議事堂に向かった。負けを認めないトランプに倣って、トランプ信者たちが抗議運動を始めるのは分かっていた。彼らの主張を聞こうと思って足を運んだ。

 私は、トランプ支持者とトランプ信者という言葉を使い分ける。選挙で敗北が決定する前にトランプを支持していた人はトランプ支持者。選挙で負けが決まった後も、トランプが勝ったというウソを信じ込む人を、トランプ信者と呼んだ。信者たちは、トランプの勝利を信じて動き出した。

 1つだけはっきりしていることは、トランプが言い募る不正選挙などなかった、ということだ。