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文在寅政権は“一強”状態 野党代表がハンスト抗議するも総スカン

米朝会談で韓国保守派は存亡の危機に

2018/05/18
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支持率は逆に上がっている

 ハンドルネーム「ドルキング」で呼ばれた金ドンウォン氏は有名な時事ブロガーで、ちょうど崔順実事件が本格的に始まった2016年10月頃からインターネット上で「いいね」や書き込みなどを不正に操作し、世論を現政権に有利に誘導しようとしたといわれている。この金氏と金慶洙候補がつながっているという疑惑が4月中旬に浮上し、現在も捜査が進行中だ。ちなみに「ドルキング」は人気のオンラインゲーム「ワールドオブウォークラフト」で自然の保護者といわれるクラスの名で、目的によって自在に変身できる「ドルイド」の王=キングの意味からつけられたそうだ。

 保守派にとっては文政権を追い込める格好のチャンスだったはずで、マスコミも影響は必至と踏んだが、渦中の金慶洙候補の支持率は今のところ調査によっては逆に上がっているところもあり、保守派「自由韓国党」の候補者を大きく引き離したまま。

 野党は、「政権の影響を受けない独立した検事」といわれる特別検事を立ち上げることを国会に求め、「自由韓国党」の金聖泰院内代表は国会前でハンガーストライキ(断食)を決行し、結局、与野党は特別検事法を作ることで合意した。しかし、その過程で、金院内代表は与党の支持者から暴行されヨレヨレになるわ、途中で倒れて病院に搬送されて断食を止めるわと散々な姿を晒すことに。

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5月3日、国会前でハンストを始めたが……(金聖泰氏のフェイスブック投稿より)

5月9日、健康状態が悪化して医師が駆けつけた。この翌日、呼吸困難となり病院に搬送された(同前)

 こんな姿を見て、「見ていて痛々しいだけ。だいたい、今時、断食するというのも理解できないし、寄ってきた人物を警戒もせずに自ら握手を求めて殴られてぼろぼろになるなんて……。一体、この人たちの危機管理はどうなっているのか。情けなさばかりが目立って、こんな党を支持する人たちのことがますます理解不能になった」(20代会社員)という声も聞かれるなど、世論の憐憫はかっても人気は遠ざかるばかりだ。

 今後、特別検事が立ち上がり、ドルキングこと金ドンウォン氏と金慶洙候補の関係が明らかになったとしても、「野党に力がなく対抗勢力が不在な中、金候補はトカゲの尻尾切りのように切られるだけで文政権は盤石」(前出記者)というのが大方の見方だ。

ソウル市長選でも現職の与党候補が独走

 そして、もうひとつ保守派の死活がかかっているのが、統一選の象徴ともいえるソウル市長選挙の行方だ。

 こちらも今のところ現職で与党「共に民主党」所属の朴元淳市長が53%(14日、韓国日報)と圧倒的な強さを見せて独走しているが、問題は誰が2位になるか、だ。

 現在2位は、保守派の新党「正しい未来党」所属で先の大統領選挙で文大統領の対抗馬だった安哲秀氏(15.2%)で、その後を5ポイント差で「自由韓国党」の候補者、金文洙氏(10.5%)が追っている。

「野党が統一候補を出したとしても、朴市長とはダブルスコアで追いつけない。それにどちらが保守本流かで競っている『自由韓国党』と旧保守派とは一線を画した新しい保守を標榜する『正しい未来党』にしても統一候補は避けたいところ。『自由韓国党』はソウル市長選で2位にもつけなければ自滅の道でしょうし、『正しい未来党』はここで安候補が2位につければ存在感をアピールできる。ただ、与党圧勝となれば保守派の存在自体がますます希薄になることは必至です」(別の全国紙記者)

統一選の時期が迫るが、野党の支持率は一向に上向かない(写真は新旧のソウル市庁舎) ©iStock.com

 保守派層では、次世代の若いリーダーを育成する動きもあるというが、新しい人物が芽を出すまでには時間がかかる。

「ドルキング」事件の行方もあるが、米朝首脳会談後は、日米、米韓首脳会談などのイベントが目白押しで韓国社会のブラックホール状態はしばらく続くとみられる。韓国の保守派の運命はさてどうなるのか!? なお、統一選は6月13日に行われる。

 それにしても、どこかで見たような与・野党の構図。野党勢力の脆弱さは、日本も同じ、ですね――。

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