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 当日朝、鷹也さんは仕事に向かい、長男はサッカーの練習試合に。母親は1歳の次女を連れ、室内で行われる保育所の運動会に出かけた。自宅に残っていたのが、長女の翼音さんだった。雨脚が強まり、心配になった鷹也さんは午前9時台に翼音さんとビデオ通話。彼女は外の激しい濁流を映しながら「海みたいになってる」と話したという。母親や友人も翼音さんに連絡をしていたが、午前10時には音信が途絶えた。

家が川に流されとるぞ!

 その前後、出張朝市で妻と富山県砺波市にいた誠志さんは、久手川地区の同級生男性から連絡を受ける。

「息子の鷹也ん家が川に流されとるぞ!」

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 誠志さんの同級生ら周辺住民は、翼音さんの家から300メートルほど川下の小高い位置で、暴れ狂う塚田川を凝望していた。見覚えのある白い壁の家屋は、濁流に揉まれながら、川沿いにあるコンクリートの壁にぶつかると、轟音を上げて破砕したという。

着ていた服は娘のもので間違いない

 10月1日午後、輪島警察署に出向いた鷹也さんは、福井県の沖で見つかった遺体の衣類写真を確認した後、報道陣の取材に応じた。

「これからDNA鑑定をするので、まだ確定ではないんですけど、着ていた服は娘のもので間違いないと思いました」

 翼音さんが身に着けていたのは、鷹也さんがあげた人気ゲーム「モンスターストライク」の柄入りのスウェットだった。

「本当に見つかってくれてよかったです。これまで捜索してくださった警察、消防、自衛隊、海上保安庁、地元の漁師の皆さんには、この場をお借りしてお礼を言いたいです。ありがとうございました。娘にはお帰りと言ってあげたい」

 能登豪雨の犠牲者は、翼音さんを含めると、14人に及ぶ。なおも1人の行方と安否が分かっていない。