原作との運命的な出会い
新庄 監督が私の小説を見つけてくれたのは、海喜館のすぐ近くだったんですよね。
大根 これも不思議な縁で、事件発覚から約1年後、海喜館の向かいにあった書店に何気なく立ち寄ったら、平積みコーナーに、まるで「ご当地犯罪小説」(笑)のように本が置いてあったんです。もう中身も確認せずにその場で買いました。ノンフィクションと違って、登場人物がユニークで、ハリソン山中と辻本拓海の師弟関係などはこれまであまり見たことがない歪(いびつ)さ。一気に魅了されて無我夢中で読み終えました。
「映像化は絶対に俺がするぞ」という思いでしたから、読みながら頭の中にはもう映像やキャストが自ずと浮かび上がってくる。その日の深夜には企画書を書き上げました。それで、その勢いのまま、版元の集英社に電話をかけたんです。
新庄 本の奥付にある代表番号にかけてくださったそうですね。こんな電話は滅多にないから、電話を受けた編集者が「オオネ……?」と戸惑ったと聞きました。上司に報告したら、「映画『バクマン。』の大根監督だよ!」って(笑)。
「地面師たち」はいくつか映像化の話が来ていたのでコンペになったのですが、満場一致で大根監督の企画に決まりました。
映像化の企画書というのは、大概パワーポイントでビジュアル的には綺麗に作られているものがほとんどのようですが、大根監督の企画書だけは、A4の紙13枚に活字がびっしり。この作品をやりたいということに加えて、監督としてこれまでどんな道筋をたどってきたか、どんな問題意識を持っているか、だから自分が撮らなきゃいけないんだ、ということが理路整然と書かれていて、圧倒されました。
※本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「『地面師たち』日本発の大勝負」)。
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