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 ――他人(ひと)の目を気にせずに、自分の生きたいように生きている感じがしますね。

 秋元 そう、そんなあゆみさんのことを、もっと知りたいと思うだろう? だから、モテるんだと思う。

いしだあゆみ ©文藝春秋

「たまたま、ルイ・ヴィトン」

 ――なるほど、そういうことですか。

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 秋元 これも、昔の話だけど、飛行機の機内で、偶然、Yさんという某ファッション誌の有名女性編集長と隣り合わせに座ったことがあるんだ。日本のアナ・ウィンターみたいな辣腕の女性。僕の初めての連載を企画してくれた編集長で、多分、14歳か15歳、歳上だったと思う。本当に美しい人で、ファッションセンスが抜群で、皮肉屋だった彼女が、相変わらず、当時の流行をバッサバッサ斬り捨てていて、じつに面白かったんだけど、ふと、コーヒーカップを持つ手に皺があって、「そうだよなあ……あれから何十年の月日が流れたんだよなあ」と感慨に耽っていたら、彼女のその手が愛しくて、愛しくて……。歳を重ねることを隠したりしない。今の自分が好きって姿勢に惚れたね。

 ――自分の価値観がブレていないかただったんですね。

 秋元 そうなの。1981年に田中康夫さんの『なんとなく、クリスタル』がベストセラーになって、一大ブランドブームの時代がくるんだけど、その時、彼女がルイ・ヴィトンのバッグを持って打ち合わせに来たわけ。だから、僕が、「Yさんでもブランド品を持つんですね?」って聞いたら、初めは何を言われているのかわからなかったらしくて、しばらくしてから、「ああ、これね」って……。「昔、パリに行った時に、バッグが壊れちゃって、もっと頑丈なバッグはないかなと思って探してたら、たまたま見つけたから、買っただけ」と、かなり使い込んだルイ・ヴィトンのバッグを見せてくれて……。製品として、作りもデザインも良かったから買ったら、たまたま、ルイ・ヴィトンだったというだけって、カッコよくない? 流行の最先端にいるのに、一過性の流行に流されることなく、いいものだけを見極めるセンスがあった人。

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(秋元康ロングインタビュー第9回「もう一度会いたくなる彼女たち」)。記事全文には、麻巳子夫人も登場。さらに、「この人はモテるだろうなあ」と思ったという小泉今日子さんの魅力について、詳細に語られている。

 

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