続々重版中の東野圭吾さんのベストセラー文庫『透明な螺旋』。累計1500万部を誇る大人気「ガリレオ」シリーズ第10作を、俳優で作家の中江有里さんが読む。

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 シリーズを通読する醍醐味に馴染みのキャラクターたちと会えることがあるが、段々と物語世界の厚みが増していくのも興味深い。

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 ガリレオシリーズ第10弾の本書は湯川の意外なプライベートが明らかになる。紡がれてきた物語は長さを誇るだけでなく、個々の人間関係、これまでの生活やルーツがどこからか流れて来た砂のように堆積し、重層的な作りになっている。

透明な螺旋』は続々重版中

 房総沖で発見された銃殺遺体。被害者の失踪した恋人の関係者として天才科学者・湯川の名が浮かび上がる。湯川と大学の同期で長年の付き合いがある刑事の草薙は、横須賀の両親のもとにいた彼を訪ねる。

 私生活をほぼ見せなかった湯川の両親登場に驚いた。認知症が進行した母の世話は父一人では手に余る、と一人息子の湯川が出向いたという。

 偏屈な物理学者が母親の介護をしているということに草薙は当惑しながら、事件の関係者の一人とコンタクトを取るよう協力を求めるが、あっさりと断られる。