秋は旅行シーズンだ。全国の観光地には大きなキャリーバッグを引いた観光客の姿が目立つ。中でも外国人観光客(インバウンド)の姿はもはや日常と言えるものになった感がある。

 日本政府観光局の発表によれば、今年1月から8月までに日本を訪れた訪日外国人数は累計で2400万人を超え、対前年比58%の急増ぶりだ。これをコロナ禍前の2019年の同時期と比較しても186万人、8.4%の増加である。このままの状況が続けば、今年の訪日外国人数は年間で3400万人から3500万人と過去最高値に達するものと予想される。

 日本を訪れる外国人の顔ぶれをみると、コロナ禍前は首位を独走していた中国人の数が減少し、首位は韓国人だ。1月から8月累計で中国人は459万人、2019年は同時期で658万人であったから30%ほど減少している。最近は回復の兆しが出ているとはいえ、中国人訪日客にひところの勢いはない。

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 観光地を歩き回るインバウンドの姿ばかりに目が行きがちだが、都内のJRや地下鉄の車両に乗っていて気づくのが、明らかに観光客ではない外国人が普通に電車内に座っている、外国人同士で日常会話をしていることだ。彼らは日本国内を旅行しているわけではなく、日本に在住しているのだ。そして話している言語の多くは中国語である。

社会的なステータスを有する在留外国人

 出入国在留管理庁の調べによれば、2023年末現在の在留外国人数は341万人を数え、前年比で33万5000人、10.9%増加している。農業従事者数は116万人。日本は外国人が農業従事者の3倍も居る国だ。

 彼らの居住地の多くが東京都だ。東京都の在留外国人数は23年末で66万3000人。前年比で6万7000人の増加だ。東京都全体の人口増はこの期間で7万人であるから、東京の人口増はほぼ在留外国人の増加のおかげとみることもできる。

 国別の内訳をみると中国が82万1838人と全体の24%を占める一大勢力だ。以下、ベトナム56万5000人、韓国41万人、フィリピン32万2000人、ブラジル21万1000人と続く。

 在留外国人と聞くと、近年政府が設けた技能実習生を思い浮かべる人が多いだろう。技能実習とは名ばかりで、農村などで農業に従事、現地でのトラブルから犯罪に至る実習生の問題などがメディアで喧伝されたこともあり、あまり良い印象を持たない人もいるだろう。

 在留外国人はおもに永住者(89万1000人)、技能実習者(40万4000人)、技術・人文知識・国際業務従事者(36万2000人)、留学生(34万人)、特別永住者(28万1000人)に分類されている。近年増加が目立っているのが、技術・人文知識・国際業務従事者や留学生といった相応の知識を持ち、社会的なステータスをある程度有している人たちだ。この事実にまだ多くの日本人は気づいていない。