拘置所のなかでは3度も自殺未遂…言動の数々が支離滅裂で、捜査関係者を困らせた31歳女性。元夫を殺害した罪を問われていた彼女を、裁判所が「詐病」と見破れた理由とは? ノンフィクションライターの諸岡宏樹氏の著書『実録 女の性犯罪事件簿』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なお本書の登場人物はすべて仮名であり、情報は初出誌掲載当時のものである。(全2回の2回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty

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2人の出会い

 祥子と孝一さんは事件の8カ月前、2人が入院していた病院で知り合った。共通の知人の女性がいて話をするようになり、病室のベッドでこっそり肉体関係まで持った。

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 看護師や医師の目を盗んで逢瀬を重ね、「パンツを脱いだらすぐ合体」というセックスに病みつきになった。2人は退院すると、すぐ祥子の実家で同棲生活に入った。

 当時、孝一さんは離婚したばかりで、仕事を失った状態だった。同居の祥子の父親は孝一さんとの交際に反対していたが、5カ月後には結婚。のちに事件現場となるアパートで同居を始めたのだ。

 しかし、孝一さんには肉体関係のある女性が多数いた。「私のことだけ考えてほしい」という祥子の願望とはズレがあり、新婚早々、孝一さんに送られてくるメールの内容をめぐってケンカが絶えなくなった。

「何よ、この『今度キスするときは納豆を口に含んでクチャクチャしようね』ってのは。この人は誰なのよ!」

 問い詰められて孝一さんは、もともと祥子を紹介してくれた知人の女性とも肉体関係があったことを告白。それが原因でギクシャクし、わずか2カ月後には離婚した。