映画『本心』(11月8日公開)の完成披露舞台挨拶がこのほど、東京都内で行われた。壇上には、主演の池松壮亮さんや、三吉彩花さん、水上恒司さん、妻夫木聡さん、田中裕子さん、石井裕也監督が登壇した。主演の池松さんは「これは今を生きる私たちの物語です」と語った。

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 この映画は、平野啓一郎氏の同名小説が原作となっている。小説の舞台は2040年代の日本。映画は2025年から始まり、AI(人工知能)やAR(拡張現実)の技術が進んで、仮想空間と現実が日々の暮らしで共存する状況になっている。

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 主人公の朔也(池松壮亮)は、依頼者に成り代わってリアルな体験をし、それを依頼者に伝える「リアル・アバター」と呼ばれる仕事をしている。ある日、母・秋子(田中裕子)が急逝してしまう。最後の会話は「大事な話があるの」だった。母の本心を知るために、朔也はAI技術を使ったVF(ヴァーチャル・フィギュア)として母を蘇らせるが、VFの母と交流を重ねるうちに、「驚くべき事実」が発覚する――というストーリー。

『本心』平野啓一郎(文春文庫)

 この日、舞台挨拶の壇上では、この映画が生まれるきっかけが明かされた。

 新聞に連載されていた同作を読んで池松さんが「これは絶対に映画化するべきだ」と、石井監督に訴えたという。

「人間とAIがどう共存していくか、など、あらゆる問題が大きくなった2040年代を描いた小説にインパクトを受けたんです」と池松さん。

映画『本心』には池松壮亮さんの思いが込められている。©2024 映画『本心』製作委員会

脚本を読んだ三吉彩花が感じた「運命」とは

 もう一人の主人公ともいえる亡き母の友人役を演じた三吉彩花さんは、ある偶然に驚いていた。

「脚本を読んだ時に『運命』を感じざるを得ませんでした。これからも映画にたずさわっていくなかで、こんな出会いは二度とないと感じました」(三吉さん)

 三吉さんが演じた役柄の名前は「三好彩花」。芸名とわずか一文字違いだったのだ。かつてセックスワーカーだった三好は様々な苦悩を背負いつつ、母・秋子の友人だったことがきっかけで、朔也と同居することになる。