「プールを造ったりして、何人もの白人の女性を連れ込んで、大声を出しながら遊んだりしだしてね。そのうち外車にも乗るようになって、まるっきり変わっちゃったね」

 近隣住民からの印象は「非常に真面目」「静かな子」だった少年は、どこで道を踏み外したのか…。性暴行ののち女性をバラバラにしたことで波紋を呼んだ、2000年の「ルーシー・ブラックマン事件」犯人・織原城二の来歴を、ノンフィクション作家の八木澤高明氏の新刊『殺め家』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む

2000年に起きた「ルーシー・ブラックマン事件」の犯人、織原城二。幼い頃の彼はどんな少年だったのか―― ©getty

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小さい頃は「非常に真面目」「静かな子」

「引っ越して来た当初は、非常に真面目でね。あいさつもきちんとして、静かな子でしたよ」

 近所に住む男性が言う。この街で織原は、誰にも差別されることなく静かに暮らし始めた。戦前の日本を代表する経済人渋沢栄一の提唱により開発がはじまった田園調布。今では政財界やスポーツ界での成功者が住む街となっている。そこに住めば、日本社会の中で認められた成功者であり、田園調布という聖域に属することによって、己の過去もすべて田園調布という衣で覆い隠すことができる。織原はこの街の住民となり日本人になったことによって、全てを手に入れた。富裕者としての禊をしたのだった。

 しかし、父親の死によって手に入れた莫大な遺産によって、少しずつ彼の人生の歯車は狂い出していく。