じつはこの前年、彼女はあるインタビューで《今後は「女の一生」をテーマにしたようなスケール感のある作品や大きな舞台など、やったことのない役柄に挑戦したいと思っています》と語っていた(『厚生労働』2014年1月号)。『放浪記』はまさにこれに当てはまる。
共演の吉高由里子が語った「仲間さんが現場にいないと…」
『放浪記』と前後してNHKの朝ドラ『花子とアン』(2014年)で演じた実在の歌人・柳原白蓮がモデルの葉山蓮子も、年下の男性と駆け落ちするなど激しい人生を送った女性であった。
同作では、蓮子の女学校時代の学友であるヒロイン・村岡花子を吉高由里子が演じた。吉高は当時の仲間との対談で、劇中で二人が決別してしばらく共演シーンがなかったときを振り返り、《私がこのころ痛感したのは、仲間さんが現場にいないとみんなだらしないってこと!》、《仲間さんがいるとね、秋口のひんやりとした風を感じたときのように、背筋がしゃんと伸びるんです》などと語っている(『ステラ』2014年9月5日号)。現場にいい意味で緊張感をもたらすとは、このころの仲間が30代半ばにしてすでにベテランの風格を漂わせていたということだろう。
クセの強い役を演じることも増えた
この年、2014年には人気ドラマシリーズ『相棒season13』に出演する。仲間の演じる社美彌子は、警察庁のキャリア官僚として内閣情報調査室に出向したという役どころで、2016年のseason15以降は常連となり、ときに水谷豊演じる刑事・杉下右京と敵対したり紆余曲折を経ながら、今月スタートのseason23では内閣情報官という要職にある。
ここ10年のあいだに美彌子のようなクセの強い役を演じることも増えた。昨年放送の男女逆転版『大奥Season2』で演じた一橋治済は、将軍・徳川家斉の母親として権勢を振るい、子供を殺すこともいとわない残虐ぶりで強烈な印象を残した。当の仲間はあまりの非道さにかえって演じる意欲をかき立てられたようだ。収録後には《そもそも時代劇というのは、誰も実際には見たことのない世界。ある程度自由に作れるものだと思っています。とんでもなく変わり者で狂気な治済なので、不謹慎ではありますが、ある意味わくわくしながら演じさせてもらいました》とコメントしている(「シネマトゥデイ」2023年10月31日配信)。