ゴキブリをあしらったケーキや、小学生から「しね」と書かれた手紙を送られたことも…。現役時代、あまりのヒールぶりから日本中で嫌われた女子レスラーのダンプ松本さん。ときには街なかでビール瓶で襲われかけた当時の思い出を語ってもらった。新刊『証言 全女「極悪ヒール女王」最狂伝説』(宝島社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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生きたゴキブリを大量にデコレーションしたケーキ
当時、暴走族のリーダーと交際していた実の妹から、最新のヤンキーファッションを拝借し、入場コスチュームもホンモノのワルに染めていったダンプは、ユウとのコンビでついにWWWA世界タッグのベルトを獲得(1988年2月25日、大田区体育館)。
当時は「ヒールには団体最高峰の赤いベルト(WWWA世界シングル王座)は巻かせない」という不文律があったため、事実上、これが極悪同盟の手にすることができる最高の栄誉だった。
クラッシュを倒しての王座奪取に日本中の女子中高生の怒りが爆発する。嫌がらせの定番である「カミソリ入りファンレター」は、ダンプが「引退するまでカミソリを買わなくて済んだ」と笑うぐらい大量に送りつけられた。なかには「生きたゴキブリを大量にデコレーションしたケーキ」というとんでもない危険物まであった、という。
「でもさ、やっぱり『ここまで嫌われるようになったか』と実感したのは、明らかに小学生の文字で『しね!』って書かれたハガキが何通も来るようになった時だよね。
あの頃のハガキって20円ぐらい? それでもさ、駄菓子屋に行けば一つか二つ、おやつが買えるわけじゃない? それを我慢してまで、ダンプがこれを見て悔しがると思いながら『しね!』って20円かけて送ってくる。本当に憎まれてるなぁ~って。
まぁ、自分は憎まれようとしていろんなことをやっているわけだから、ここまで憎まれなかったら、今までやってきたことは失敗だったってことになるでしょ? ああやって国民から本気で憎まれるってことは、プロレスラーとしては“成功”なの。そこは覚悟を決めてやっているわけだから、けっしてつらくはないよね。よく大変だったでしょ?って言われるけど、大変ではなかったよ、本当に」