全日本女子プロレスで80年代に一世を風靡した、ダンプ松本、ライオネス飛鳥、長与千種たちのエピソードをもとにしたNetflixオリジナルドラマ『極悪女王』が話題を呼んでいる。
レスラーたちが心の揺らぎを抱えながら、その思いを技やパフォーマンスに変えてリング上でぶつけあう。そして、その姿が観客の熱狂を巻き起こす──そんな女子プロレスの熱狂を描いた日本の作品が、実は40年前にもあった。
その映画は『美少女プロレス 失神10秒前』(84年)。日本のアクション・シーンに新しい風を呼んだと言っていい作品である。
『美少女プロレス~』は日活(公開当時は「にっかつ」)ロマンポルノの正月オールスター映画として作られた。しかし、実は成人映画の皮をかぶった真っ向勝負の女子プロレス映画なのである。なにせ、いきなり元全女のレスラー・佐藤ちのが、女優相手にきれいなジャイアントスイングをお見舞いするところから始まるのだから。
ジャイアントスイングで上半身があらわになり…
『美少女プロレス~』は、親友同士のメグ(山本奈津子)としのぶ(小田かおる)の人間模様を中心に描かれる。彼女たちはそれぞれ別々のプロレスの強豪女子大に入学。ひょんなことからプロレス愛好会で一方的なしごきを受け、入部するハメに。しかも想っていた男性はしのぶに取られてしまって……。
ロマンポルノだから、当然お色気も満載だ。冒頭のジャイアントスイングでは相手の上半身があらわになってしまうし、唐突な全裸のバトルロワイヤルや、リング上での大乱交など、軽快なテンポでお色気が振りまかれる。
一方で、そんな乱痴気騒ぎに失意のメグが、彼女を励ましてくれる応援団の気弱な青年・山田(田浦智之)の恋心にこたえ、ティッシュだらけの部屋でヴァージンを捧げるくだりなど、コミカルながらも青春のみずみずしい感情があふれるシーンもある。オールスター作品だけあって、当時のロマンポルノの要素をつめこんだような趣さえある。
だが後半からは一転、怒涛のスポ根展開となる。ライバル大学とのタッグ戦にしのぶが出場するという知らせが入ると、メグはタッグ戦への出場を申し出る。実はウラで相手チームが勝つというシナリオが描かれているのも知らず、打倒しのぶのための猛特訓を開始、いよいよ試合の日を迎える。
ボディスラムからスモールパッケージホールドまで相手の多種多彩な技で翻弄されるメグだったが、山田の機転によって逆襲を開始。いつしか成人映画であったことすら忘れるような、手に汗握る大熱戦が繰り広げられるのだ。