臨床心理士・信田さよ子さんのもとには、親子関係や家族関係に悩みを抱える人がカウンセリングに訪れる。その多くは女性たちだという。いったい、彼女たちはどんな悩みを抱えているのだろうか——。

 ここでは信田さよ子さんの著書『母は不幸しか語らない——母・娘・祖母の共存』(朝日文庫)より一部を抜粋。浮気や不倫をした男性が、決まって口にする“お決まりの言い分”とは?(全2回の2回目/1回目から続く)

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ひたすら自己批判に徹する男性たち

 男性の側はほぼ来談することはないが、数少ない例から彼らの言葉を再構築してみよう。

「本当に悪いと思っています。誰のせいでもありません、妻も悪くありませんし、彼女も悪くないんです。弁解するなんてことはしたくありません」

 このようにひたすら自己批判に徹する彼らの姿は、まるで犯罪者のようでもある。性犯罪の加害者がカウンセリングにやってきて最初に述べる言葉とそっくりそのまま同じだ。

 別に彼らを性犯罪加害者と同じと言っているわけではない。妻と同じ女性である私が何を考えているかがよくわかっている彼らは、攻撃を避けるために、ひたすら反省の姿を示す。それは婉曲的な自己弁護として機能する。

 彼らの多くは妻に言われて来談する。それを拒むことは妻を傷つけた行為を反省していないことになるからである。しかしひとたびカウンセラーである私と気心が知れた関係になったという感覚を抱くと、彼らの一部はまるで少年のような語り口で言う。