1ページ目から読む
2/3ページ目

「僕は生き直したい」別の女性にこころ惹かれた男性の言い分

「出会ってしまったんです、どうしようもなく惹かれてしまったというのが正確でしょうか。どこか運命的で、最後の人かもしれないと思ったんです。それが妻に対して裏切りであることはわかっています。でもどうしようもなかったんです。僕は、無責任な男でいたくありません。

 彼女に対して自分の言葉に責任をもちたいと思いました。それに、僕は生き直したかったんです。これまでの順調な人生は妻のおかげだし、こころから感謝しています。このままいけば、妻と老後を穏やかに送ることになるでしょう。でも、僕は生き直したかったんです」

 別の女性にこころ惹かれてしまったこと、その女性のためには妻を捨てかねない。それを告白・告知する際にそろって口にするフレーズが「僕は生き直したい」なのだ。これは単なる偶然なのだろうか。

ADVERTISEMENT

浮気でも不倫でもなく「恋愛」

 中には彼らの言動を笑う人もいるだろう。何を大げさな、どう見たって単なる浮気じゃないか、男性週刊誌がそろってとりあげる60歳以上のセックス記事と同じだ。バレなければ妻に告白なんかせずに誤魔化して隠し通せばいいのだ、なかったことと同じなんだから……。せいぜいお互い都合よく不倫やダブル不倫のままでバランスよくやっていく、それが大人というものじゃないか。

 こんな意見が多数派だろうし、60年以上も生きてきた彼らが、男性社会のそんな常識を知らないはずはない。ちょっと心理学をかじったことのある人なら、妻と愛人との板挟み状況にある自分に酔っているだけじゃないか、と解釈するだろう。

 女性の中には、妻が重すぎたのよ、私だけを愛してって夫に要求し過ぎたんじゃないの、男ってね、息抜きしたいもんなのよ。妻と違うタイプを知って思わず新鮮に感じたんじゃないの、まあゆったり待ってなさい、必ず戻ってくるから、いずれ飽きるわよ、などと映画やドラマに登場する飲み屋の女将みたいな発言をする人もいるだろう。しかし、こんな人生相談の凡例みたいな解釈をしても意味はないと思う。

 おそらく彼らは、自分の行為に浮気・不倫といったマイナスの定義を与えたくないのだ。彼らにとって、それは「恋愛」なのである。