それでもどうして臨時バス運行を実施できた?
それでも「森の芸術祭」の臨時バス運行に協力することができたのはなぜなのか。同じエリアでバス事業を営む他の事業者と“連合軍”を組むことができたからだ。下山さんによれば、周辺の事業者とはかねてから協力関係を築いてきたという。
「バス会社はどこも乗務員不足で悩んでいますから、これまでもお互いに困ったら助ける、助けられるという関係ができていたんですね。お互いに困っていたら助けますよ、という。
『森の芸術祭』でも、同じエリアのバス会社さんに助けてもらって運行ができました。乗務員だけでなく、臨時バスを走らせたら設備とかもあるので車両を他の便に回すことができない。ウチだけだったら、とてもじゃないけれどムリですからね」(下山さん)
津山では駅周辺の市街地を除くと、年々人口が減少してインフラも衰退。交通弱者も増える一方だ。そうした状況を受けて、公共交通を維持していくための協力関係が欠かせなかった。それが、「森の芸術祭」でも活かされたというわけだ。
また、同社が運行している岡山空港と津山市内を結ぶ乗合タクシーも、「森の芸術祭」に合わせてJR西日本のアプリで予約できるシステムを取り入れるなど、JR西日本との協力関係も深まっている。
「JRさんとは代行バスをやらせてもらうこともあって、これまでもやりとりはあったんです。『森の芸術祭』をきっかけに、さらに広く深く協力関係が築けてきているかなと思います」(下山さん)
縮まった「事業者同士の距離」
こうした意識の変化は、JR西日本でも感じているという。同社で地域の交通事業者との窓口を担っている玉置和樹さんは次のように話す。
「これまでも地域のバス会社などの交通事業者とは、地域公共交通の会議などでお話しすることはありましたが、ここまで密にやりとりをしたことはありませんでした。『森の芸術祭』で、バス会社さんや市町村とも一気に距離が縮まったのかな、と。
それぞれの地域ごとに路線バスやコミュニティバスは走っているんですが、それを広域に連携することでどうなるのか。津山市だけでなく、新見市でも5事業者で連合を組んで対応くださったり、地域を跨いで臨時バスを運行してもらったり、いろいろといいきっかけになったと思っています。『森の芸術祭』が終わってからも、今回築けた関係を活かしていければ」(玉置さん)