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手術後、鏡を見て思ったこと

──手術後、鏡でご自分の体を見てどう思われましたか。

矢方 ここまでする必要はなかったんじゃないかと一瞬思いました。病理検査の結果がすごいよかったら、全摘出しなくてもよかったと後悔するんじゃないかって。でも、手術してみないとわからないし、それはもう自分の将来も考えて受け入れるしかないと思うようにしました。それに、誰もができる経験じゃないので、じゃあ私はこの経験を生かして誰かを励ましたり元気づけたりできたらいいなと前向きにとらえることにしました。

 

──脱毛なども気になりますが、それも前向きに。

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矢方 抗がん剤治療で、外見の変化がいろいろ出てくるかもしれませんが、ウィッグや帽子でカバーできると思っているので、そこも楽しみながらやれたらいいなと思います。抗がん剤治療で脱毛経験のある方がSNSで「こういうことをするといいよ」ってアドバイスをくださるのも参考になりますし、本当に私って幸せ者だなと思っています。

──矢方さんがブログやSNSで病気のことを伝えるのも、誰かの元気や勇気につながっているのではないでしょうか。

矢方 ほんとですか? うれしい。私、生きている中で結構いいことがあるほうの人間だと思っているので、いつも「幸せだな、私」と思って生きているんです。晴れているだけで「ああ、生きててよかった」って思いますし、雨なら「傘を持っていてよかった」みたいな(笑)。とはいえ、たまにSNSに「泣いてます」とか書いちゃって、まだまだ弱い人間ですけど、生きているからそういうところもあるよっていうのは正直に伝えていきたいです。あふれる時はあふれるしかないので。

 あと、メッセージをくださった方とやりとりしていると、「感謝しています」ってお言葉をいただくことがあるんですけど、「いやいやいや、逆に最初にメッセージくれたのあなたですよ」って思うんですよ。私の存在を知ってメッセージを送ってくださって、感謝しているのは私の方です、って。

 

──「いいこと」があると信じるのが大事なんですね。

矢方 私は、仕事柄も性格的にも、開き直りじゃないですけど「やるしかねえ!」って決めて前向きに生きています。メッセージをくださる方のなかには、まわりの誰にも病気を打ち明けられずに隠して生きている方もたくさんいて、それがまたストレスになるという悪循環に苦しんでいる方もいる。そういう方には「1人じゃないよ。いつかは絶対いいことあるから、一緒に頑張りましょう」ってお伝えしたいですね。

写真=山元茂樹/文藝春秋